「予算特別委員会」質問:農林水産部
「有害鳥獣対策について」

2022年3月15日

 
 民主県政県議団の原中誠志です。発言通告に従い、「有害鳥獣対策について」質問する。

 今回の質問にあたり、2021年12月22日、田川市のジビエ猪国、同日、みやこ町の有害鳥獣加工センターを視察した。また、2022年1月26日の西日本新聞、「鳥獣対策、警備会社におまかせ」という記事を読み、視察やマスコミの報道を踏まえ、本県における鳥獣被害の現状、駆除作業の状況、さらには狩猟後の運搬、食肉の加工販売について、問題意識を持った。

 いまも自民党県議団の吉田浩一委員の質問があったが、これまで本県が取り組んできた鳥獣被害対策を補足、強化する立場から、本日の質問に至った。

 一口に有害鳥獣と言っても、イノシシやシカといった、駆除に技術を要する野生動物から、今日ではハクビシン、さらいはイタチ、ネズミ、コウモリといった動物も、獣害対策の対象になっている。

 こうした有害鳥獣の駆除に当たっては、猟友会の会員の方々が、専門に罠かけされたり、猟銃で駆除をされたり、さらには自治体が独自で駆除をするという事例もある。さらに、インターネットを検索すると、全国で、有害鳥獣を専門に駆除する民間事業者は数多くヒットする。こうした民間事業者を、それぞれの地域で活用できれば、野生鳥獣による農作物被害を減らせるのではないか。

 そこでまず執行部に、事前に、「令和2年度の野生鳥獣による農作物被害」について資料要求をしているので、委員長のお取り計らいを願いする。

Q1:まずこの資料について、執行部より説明をお願いしたい。
 

  • A1:池田農山漁村振興課長
    •  令和2年度の野生鳥獣による農作物の被害額は、6億8百万円となっております。
    •  その内訳としましては、鳥類が1億8千9百万円、獣類が4億1千9百万円、そのうち、イノシシによる被害が3億1千万円で、全体の約半数を占める状況です。
    •  なお、地域別では、筑後農林管内が1億6千6百万円と最も多く、次いで朝倉農林管内が1億4千6百万円となっております。

 
 この資料を見ると、地域別では、福岡、筑後、飯塚、朝倉農林の管内の被害が多いのが分かる。また福岡管内でも非常に多いというのは、資料からも分かる。県中央部から、県南部にかけて被害が多くなっている。
 また、鳥獣の種類では、イノシシの被害が非常に多く、福岡農林管内でも最も多くなっている。

Q2:そこで、イノシシによる被害について、作物別の状況について答えを願う。
 

  • A2:池田農山漁村振興課長
    •  令和2年度のイノシシ被害、3億1千万円のうち、稲や麦類の被害が4割、次いで果樹が3割、野菜が2割となっております。

 
 県では、こうした被害を軽減するために、有害鳥獣の捕獲と、捕獲した鳥獣の食肉としての利用を推進されているということである。

Q3:そこで、直近のイノシシ、シカの捕獲頭数を教えて頂き、また、そのうち食肉として利用された頭数と捕獲した頭数の何割が食肉として利用されているのか、併せて示して頂きたい。


  • A3:池田農山漁村振興課長
    •  令和2年度の捕獲頭数につきましては、イノシシが3万頭、シカで約1万1千頭捕獲されております。
       そのうち、食肉として利用されたのは、イノシシで約2千頭、シカで約8百頭となっており、利用率はイノシシ、シカとも7%程度となっております。

 
 捕獲されたイノシシ、シカとも、わずか7%しか食肉として活用されていない。非常に残念である。冒頭申し述したが、昨年12月22日に、福岡市内のフレンチレストランのオーナーシェフとともに、獣肉処理加工施設を視察したが、その時に、衛生的に処理されているうえに、品質も非常に良かったということで、その施設で加工された獣肉の注文をされた。
 
 また、県でも、「ふくおかジビエフェア」を開催するなど、獣肉の消費拡大も推進されている。ジビエの需要は、今後ますます増加してくるのではないかと考えている。
 
Q4:そこで、県内の獣肉処理加工施設は、いくつあるのかお答えください。
 

  • A4:池田農山漁村振興課長
    •  令和2年度末現在の県内の獣肉処理加工施設は、公設が6施設、民設が11施設あり、計17施設となっております。

 
Q5:それでは、次に、県内の獣肉処理加工施設では、年間どれくらいの頭数が処理できるのか処理能力を教えて頂きたい。併せて、直近の処理実績と処理能力に対する割合を教えて頂きたい。その上で民間の施設については把握されてないということだが、公設の施設についての状況をお伝え頂きたい。
 

  • A5:池田農山漁村振興課長
    •  公設の6施設の令和2年度の処理実績は約1,500頭となっております。また、年間処理可能頭数は約2,300頭とっておりますので、処理の割合は約6割であります。

 
 いま答えがあったように、公設の獣肉処理加工施設だけでも、まだ年間800頭も処理できる能力があるが、使われていないという状況である。これは極めてもったいない話である。
 
 先ほど答えて頂いたが、捕獲頭数のわずか7%しか食肉として利用されていない。この要因のひとつとして、捕獲後すぐに止め刺しして、運搬をし、獣肉を冷蔵しないと食材として活用できないということにあると説明を聞いている。それは理解している。
 
 しかしながら、県においても、捕獲から運搬まで、いわゆる撃って山からそれを運び出すという、そういう運搬までの作業が、猟友会の方々もかなり高齢化をしていて、随分苦労されているという話も聞いている。
 
 そうした意味では捕獲から運搬までの作業が、民間会社にできないか。先ほど述べたように、西日本新聞の記事にもなっているが、警備会社の「ALSOK福岡」に協力を頂いて、「ALSOK福岡」が今実証しているというふうに聞いている。その先の加工施設の運営や獣肉の販売まで、一体的に行うことで民間企業としても利益を確保でき、この分野に参入できるのではないかと考えている。
 
Q6:そうした取組を行っている県内の民間事業者について、県はどのように把握しているのか。
 

  • A6:池田農山漁村振興課長
    •  県内では、飲食店が捕獲に取り組み、自ら整備した獣肉加工処理施設で加工し、料理を提供している事例が一つあります。

 
 これもまた残念ながら、県内では1事例しかないという状況だが、他県では、これもインターネット上ではたくさん発報されている。他県ではそういった取組を大規模に行っているという事業者もあるようだ。
 
 本県の実証に協力して頂いてるALSOKと同系列のようだが、鳥獣保護管理法に基づく「認定鳥獣捕獲等事業者」となり、捕獲したイノシシやシカを回収するとともに、同事業者が衛生管理など食品関連の資格も取得をし、獣肉の加工も手がけ、飲食店に販売するなど、ジビエ事業に参入しておられる。
 
 そこで、同事業者は、「害獣から農作物という財産を守るのも警備会社の仕事だ。農家や猟友会は高齢化が進んで苦労されている。その部分を我々が引き受ける」ということで、そういう方針でこの事業者が取り組まれている。警備業が、異業種ともいえるジビエ産業への挑戦である。
 
Q7:そこで本県でも、このような取組を行う必要があるのではないか。執行部の考えは。
 

  • A7:池田農山漁村振興課長
    •  本県では、これまで県内2市町で、捕獲後の止めさしから処理場までの運搬を、民間事業者ができないか実証してきたところです。
       来年度からは、市町村の枠を越え、広域的に取り組むことで、作業の効率化が図れないか実証を始めることとしております。
       委員ご指摘の他県の取組については、まだ始まって間もないことから、その状況を注視してまいります。

 
 冒頭、資料に基づいて説明頂いたが、年間6億円近い野生鳥獣による農作物被害が本県内で発生している。やはり、こうした作物を守るということは、本県の主要な取組の一つであると思う。これからもしっかり、こうした有害鳥獣対策について取り組んで頂くことを強く要望し、質問を終わる。