2024年10月『決算特別委員会』質疑応答
農林水産部:持続可能な漁業振興について

 民主県政クラブ県議団の原中誠志です。通告に従い、本県「筑前海」における「持続可能な漁業振興について」質問いたします。
 
 九州北部に位置する福岡県は、日本海側の「筑前海」、 瀬戸内海側の「豊前海」、干拓広がる「有明海」という特色ある3つの海に囲まれています。そして、これらの海は、私たちに豊かな海の恵みを与え、まさに〝県民の胃袋〟を満たし、栄養を支えています。

 この「筑前海」、「豊前海」、「有明海」の3つの海のうち、最も広い「筑前海」は日本海に面しているため、冬場になると「うねり」や「時化」が多く、また波が静かな入り江も少ないことから、大分県や熊本県、長崎県で盛んに行われている魚類養殖には不利な面があります。

 
 その一方で、全国に自慢できる良質な「天然魚」が水揚げされる、天然魚の宝庫でもあります。
 
 しかしながら、天然であるがゆえに、その資源は自然の力にゆだねられている 部分もあります。海にすむ魚は、ほんのわずかな水温の変化を感じ取れるほど敏感で、水温の1℃は、陸上の気温変化の10℃と同じとも言われます。
 
 今年も、暑さが続き、9月になっても、頻繁に熱中症アラートが発出されております。また、毎年のように記録的な豪雨もあり、こうした異常気象が海にも及んでいるのではないかと懸念されます。

 そこで、まずは、「筑前海」における漁業の特徴や、漁業種類、そして漁業秩序についてお伺いします。


質問1:「筑前海」では、大小さまざまな沿岸漁業が行われていると聞いておりますが、具体的にどのような漁業種類があるのか、「筑前海」での沿岸漁業の特徴と併せてお答えください。

答え1(水産振興課長)

  • 「筑前海」では様々な漁業種類があり、季節ごとに来遊する魚介類を漁業者同士が上手に利用しあいながら、多くの種類の水産物を水揚げするという特徴があります。
  • 具体的な漁業種類としましては、複数の船で船団を組み、アジやサバなどを網で囲って取り上げる「まき網」、投入した網を手繰り寄せ、タイなどを漁獲する「ごち網」、フグやアマダイを漁獲する「はえ縄漁」といった比較的大型の漁業に加え、沿岸で行う「刺し網」や「一本釣り」などの漁業がございます。

 同じ海で様々な漁法を用い資源を利用しあうという特性があるということですが、 反面、漁業のトラブルも発生するため、漁業にかかるルールの基本となる「漁業権」や「漁業種類ごとの許可」というものがあると聞いております。

質問2:そこで伺います。県がその許認可を行っていますが、まず、漁業権とはどういった 権利なのか、また「筑前海」にどういった漁業権が、何ヵ所、設定されているのかお答えください。

答え2(水産振興課長)

  • 漁業権とは、漁業法に基づき、排他的に漁業を営む権利です。本県「筑前海」には「共同漁業権」と「区画漁業権」の2種類の漁業権が、漁業協同組合に免許されております。
  • 「共同漁業権」とは、定着性の高いアワビやアサリなどを漁獲する際に、漁業者間での獲り合いといったトラブルがないよう、漁協ごとに一定のエリアを設けて免許されるものです。
    • 「筑前海」区内には北九州市から糸島市にかけて、合計52の「共同漁業権」の区域が設定されております。
  • もう一つの「区画漁業権」は、ノリやカキ、ワカメといった養殖を行うため免許されるもので、海区内には合計58の「区画漁業権」の区域が設定されております。

 漁業のトラブルが生じないよう、また漁業者の利益を守るために漁業権が設定されているとのことでした。
 
質問3:それでは、「漁業の許可」とはどういうものなのか、お答えください。

答え3(水産振興課長)

  • 水産資源に与える影響が特に大きい漁業種類に対し、「操業を禁止する区域」、「操業できる期間」、「使用できる漁具」などの条件や制限を付して許可するもので、具体的な漁業種類としては、「まき網」、「ごち網」、「底びき網」などがございます。

 漁業権や漁業の許可、そして許可条件など、細かいルールが敷かれているとの答弁がありましたが、海の上には、道路で言う白線や黄色の線といった路面標示、一方通行などの道路標識も、もちろんありません。
 
 漁業者は、資源を守るため、見えないルールを守りながら操業するという大変さを抱えており、頭が下がる思いであります。
 
 一方、ルールがあることは、当然、違反する者、あるいは他県からの密漁もあると考えられます。そういう意味で、漁業取締り業務というものが大変重要であると考えます。

質問4:そこで伺います。筑前海ではどのような体制で漁業取締りを行っているのか、また、取締り業務にあたって、職員は特別な資格が必要なのか、他の海区も併せてお答えください。

答え4(水産振興課長)

  • 本県「筑前海」では、「しんぷう」、「げんかい」、「つくし」。また、有明海では「ありあけ」、豊前海では「ぶぜん」の計5隻の漁業調査取締船を配置し、海上保安部とも連携しながら、密漁や操業違反を監視しております。
      • 違反船を発見した場合は、直ちに船を横付けし、立入検査を行うとともに、悪質なものについては、検挙、送検をおこないます。
  • こうした業務を行う職員には取締の権限が必要であるため、知事が「漁業監督吏員」、「司法警察員」に任命し、取締業務を行っています。

 「筑前海」の治安維持のため、日夜、ご奮闘頂いております漁業調査取締船の船員、職員の皆様のご労苦に感謝申し上げます。今後とも、漁業秩序の維持にしっかりと取り組んでいただくよう、お願いします。
 
 次に、本県で漁獲される水産物の多くは、福岡市中央区にある特定第3種漁港である「博多漁港」、通称「長浜漁港」とも言いますが、ここに水揚げされると聞いております。
 
質問5:博多漁港は、日本有数の水揚げ額を誇っているとのことですが、直近の水揚げ量と、水揚げ額について、全国順位と併せてお答えください。

答え5(水産振興課長)

  • 直近5年の博多漁港の水揚げ量をみますと、約6万トンと安定しており、水揚げ額は355億円から484億円の間で推移しております。
    令和5年では、全国の漁港のなかで、水揚げ量は11位、水揚げ額は2位となっております。

特定第3種漁港(とくていだいさんしゅぎょこう)
 利用範囲が全国的な漁港のうち、水産業の振興のためには特に重要であるとして漁港漁場整備法の 政令で定められた漁港。略称は「特三」。本州と九州にのみ分布し、全国に13港ある。

質問6:水揚げ量が少ない割には、水揚げ額、売上が高いようですが、その要因についてお答えください。

答え6(水産振興課長)

  • 博多漁港では、水揚げ量約6万トンのうち、単価の安いサバやイワシは3割程度にとどまり、 残り7割は単価の高いマダイやブリ、イカなどの魚種が占めております。
      • このため、他の漁港と比べ、水揚げ量の割りに水揚げ額の順位が高くなっております。

 そういう意味では、博多漁港は、全国有数の高級魚の水揚げ港であるとも言えます。
 
 私も魚好きで、自分の住んでいる福岡市中央区に、このような漁港があることは、 大変誇らしく、嬉しいことであります。
 
 しかしながら、冒頭申したように、猛暑や豪雨といった異常気象が水産資源に影響を及ぼしていないか、心配されるところです。
 
質問7:そこで、まず、日本海沿海の東シナ海から日本海、北海道沖にかけての海水温の変化について、お答えください。

答え7(水産振興課長)

  • 本年3月に気象庁が発表した、海面水温の長期変化の傾向をみますと、過去100年間で、東シナ海では1.2から1.3℃、日本海では1.5から1.9℃、北海道沖では0.4℃ほど 上昇しております。

 日本海での水温上昇が最大1.9℃となると、先に触れましたように、魚にとっては、大きな変化であると考えられます。
 
質問8:では、「筑前海」の海水温の変化についてはどうなのか、お答えください。

答え8(水産振興課長)

  • 本県「筑前海」では、県水産海洋技術センターが、海洋観測を継続しております。
      • 昭和25年から令和4年までの73年間のデータを解析すると、約0.8℃の水温上昇がみられます。

 ただいま、全国的に海水温が上昇し、筑前海でも上昇傾向という答弁をいただきました。
 
 そうなると、筑前海の漁場、特に、稚魚の隠れ家となり、餌場となり、水産資源の育成場として「海のゆりかご」と呼ばれる「藻場」が、減少しているのではないかと心配されます。
 
質問9:他県では、「磯焼け」と呼ばれ、海藻が茂る藻場が減少していると聞きますが、「筑前海」の藻場はどのような状況なのか、お答えください。

答え9(福岡の食販売促進課)

  • 「筑前海」の沿岸域には、約4,800haの藻場が形成されております。このうちの約130haの藻場が、主にムラサキウニの食害により減少しております。
  • 海藻が少ない場所に生息するムラサキウニは、身が痩せ、商品価値がなくなっております。

質問10: ムラサキウニによる食害で、藻場が減少しているとのことでありますが、藻場を守るためにどのような対策を行っているのか、お答えください。

答え10(水産振興課長)

  • 県では、漁業者が行うウニの除去や、海藻の種を投入するといった取組に対し、平成22年度から支援を行っております。
  • あわせて、除去したウニに地元産野菜や流れ着いた海藻を与え、身を太らせ、商品化する養殖の取組に対しても、支援しております。

 そうした漁業者のみなさま方のご努力には、頭が下がる思いであります。

質問11:それでは、次に、魚の方では、来遊する魚種に変化はみられていないのか、お答えください。

答え11(水産振興課長)

  • 特徴的なものとして、南方系の魚でありますサワラが、増えております。この20年で約2倍の800トンまで水揚げされるようになっています。

「博多漁港」の主な魚種
 〇サワラ - 2002年(平成14年)度陸揚量全国1位
 〇サバ - 2002年(平成14年)度陸揚量全国4位
 〇ハモ - 2002年(平成14年)度陸揚量全国4位
 〇アジ類
 〇ブリ

 南方系のサワラが増えているとのことですが、北海道では10年ほど前からサケの定置網でブリが大量に漁獲されていると聞きます。現地では、ブリの食文化がなく、取り扱いに苦慮しているとのことです。
 
 また、先日は、北海道函館市沿岸で、普段はほとんど見られないカツオが連日水揚げされ、地元漁業者が困っているとの報道もありました。
 
 本県でも、サワラが増えて困っているのではないかと心配されるところです。

質問12:そこで伺います。漁獲が増加したサワラを有効に活用していくことが必要と考えますが、どのような対策を行っているのか、お答えください。

答え12(水産振興課長)

  • 先ほど、答弁しましたように、本県筑前海では様々な漁業種類があり、季節ごとに来遊する水産物を上手に利用してきております。
  • サワラについても高値で販売できるよう、釣りあげたあと、船の上で直ちに血抜きを施し、水氷で冷却するなど品質向上のためのマニュアルを作成し、これに沿って漁業者を指導しています。
  • その結果、糸島地区におきましては、マニュアルに沿って処理したサワラを「特鮮本鰆」としてブランド化し、市場で高く評価されております。

 来遊する魚が変化する中でも、サワラのように高値での販売につながっていけますよう、引き続き、研究指導を行っていただくことを要望します。
 
 これまで、「筑前海」の漁業について質問してきましたが、漁業は自然の恩恵を受けて成り立つものです。異常気象とも向き合っていくことも、ある意味必要と考えます。

質問13:そこで最後に伺います。「筑前海」において、天然の漁業資源をこれからも安定して確保していくために何が必要か、お答えください。

答え13(水産振興課長)

  • まずは、先ほど、委員ご指摘のありました、水産資源を育む藻場をしっかり保全していくこと。また、魚礁の設置や投石による漁場づくり、種苗の放流や資源管理といった取組を継続して実施していくことが必要であると考えます。
  • そして、海の変化をしっかりと把握していくため、海洋環境のモニタリングを引き続き実施するとともに、水温や塩分、潮流といった漁場の環境を予測して、漁業者に情報提供することで、効率的な操業につなげることが必要であると考えております。
  • こうした取組により、「筑前海」における、天然の漁業資源の安定確保を図ってまいります。

 古来より、我が国の食を支えてきた漁業ですが、「筑前海」を含む、東シナ海、日本海と、海水温の上昇が顕著にみられます。

 こうした海洋変化、更には、世界的な乱獲によって漁業資源が枯渇するのではないかという危機感を、私は強く持っています。


 これから先、子や孫の時代になっても豊かな海の恵みを頂けるよう、いまの私たちの時代に持続可能な漁業を作り上げることが必要と考えます。


 これまで以上に水産局のご努力をお願いし、私の質問を終わります。