2024年10月『決算特別委員会』質疑応答
教育委員会:本県の郷土史教育について
民主県政クラブ県議団の原中誠志です。発言通告に従い、「本県の郷土史教育について」質問します。
2021年、令和3年は、1871年、明治4年に行われた「廃藩置県」により「福岡県」が誕生して150年の節目にあたる年として、県は「福岡県置県150周年」の取り組みを実施しました。
この歴史的な節目にあたり、私は2022年2月の『2月定例会』一般質問において「本県の歴史的認識と今後の広報について」知事の認識を質したところです。
併せて、県内の市町村立学校並びに県立高校において、生徒に本県の近・現代史および地方史、郷土史をどのように伝えているか。そして、今後、 どのように伝えるべきか、教育長の認識を質したところです。
Q1:そこでお聞きします。
本県の市町村立学校、そして県立高校における郷土史教育はどのように 行われているのか、それぞれお答えください。
【義務教育課長答弁】
小中学校では、主に社会科、道徳科、総合的な学習の時間を中心に身近な歴史上の人物を取り上げ、先人の功績への理解と尊敬の念及び郷土への愛情や誇りを育む教育活動を行っている。
こうした教育活動に活用するため、多くの市町村教育委員会では、地域の歴史や地域の発展に尽くした先人を取り上げた郷土資料を作成している。例えば、久留米市の「わがふるさと久留米」という副読本では、ブリジストンタイヤの創始者である石橋正二郎氏や発明家である田中久重氏などが取り上げられている。
【高校教育課長答弁】
高校では、小中学校における学習を踏まえ、地理歴史科などの授業において、地理的条件や世界の歴史と関連付けながら我が国の歴史を大きく捉えさせることとなっている。
その上で、地域や各学校の実情に応じ、朝倉光陽高校の「郷土学」など、学校設定科目で郷士について学ぶ科目を設定したり、特別活動や部活動で地域の史跡や博物館などを訪問したりする活動を行っている学校もある。
いまお答えにありましたが、県内各市町村においては、それぞれ市町村立学校の教材として「郷土の歴史」教本が作られ、授業で取り上げているということでした。それは大変素晴らしい取り組みと思います。
Q2:そこでお聞きします。
こうした教材は、「福岡県立図書館」に収納され、閲覧できる状況にあるのか、お尋ねします。
【教育振興部長】
県立図書館では、現在、19市町の郷土の教材を収集しており、館内で開覧できるようになっている。
今後、郷士に関する調査相談や子どもたちの調べ学習などで活用できるよう、県立図書館において、教材を作成している市町村の情報の把握に努め、積極的に収集してまいる。
本県内市町村が作成する教材については、「我が街の偉人」を知るという点では申し分ありません。しかしながら、全県的に知名度が高い、まさに 福岡県が誇る偉人という点では、課題もあります。
Q3:そこでお聞きします。
本県内の公立小中学校で使用されている教科書において、歴史上の人物として取り上げられているのは何名いるか。そのうち、本県ゆかりの人物は何名いるか、お聞きします。 併せて、県立高校においても同様に、お答えください。
【義務教育課長答弁】
教科書会社によって取り上げられている人物は異なっており、その人数についても差はあるが、ある教科書会社の例を挙げると、小学校社会科の教科書では61名、中学校社会科歴史分野の教科書では351名の人物が掲載されている。
そのうち、本県にゆかりのある人物として一般的に認識されているような人物は、小学校の教科書では見受けられないが、中学校では、松本清張など3名が確認できた。
【高校教育課長答弁】
小中学校と同じ教科書会社の、高校の必修科目である「歴史総合」の教科書では、210名の人物が掲載されており、そのうち本県にゆかりのある人物は、森鴎外1名のみであった。
いま、義務教育課、高校教育課からそれぞれお答え頂きましたが、本県ゆかりの人物は小学校の教科書にはいない。中学校の教科書では松本清張、森鴎外、菅原道真。県立高校の教科書では、森鴎外のみと、本県ゆかりの人物は極わずかという状況です。
本県では、日本を代表する企業のみならず、世界に冠たる企業の創始者や創業者など、多くの偉人、先達者が輩出されています。
先ほどの答弁では、久留米市出身で、「ブリヂストンタイヤ」(現:ブリヂストン)の創業者・石橋正二郎(いしばししょうじろう)氏。世界に誇る総合電機メーカー「東芝」の祖、久留米出身で「からくり伊右衛門」の名を持つ日本の発明王・田中久重氏の名前が出ましたが、同じく総合電機メーカー「日本電気株式会社」すなわち「NEC」の創業者は豊津町出身の岩垂邦彦(いわたれくにひこ)氏です。
それ以外も多くの先人、偉人が輩出されています。
例えば、「出光興産(いでみつこうさん)」創業者で宗像市赤間出身の出光佐三(いでみつさぞう)氏。ちなみに、出光氏は百田尚樹(ひゃくたなおき)原作「海賊とよばれた男」のモデルであり、俳優・岡田准一(おかだじゅんいち)氏が主演を務めた映画の主人公としても有名です。
更に、福岡市中央区荒戸の出身で、「三井財閥」総帥の団琢磨(だんたくま)氏。福岡市早良区鳥飼村の出身で、世界のロボット工場と称えられる「安川電機」創始者の安川敬一郎(やすかわけいいちろう)氏。博多区対馬小路出身で、日本のグライダー・航空機設計者として著名な前田健一(まえだけんいち)氏など、まさに世界に名を馳せる人物といえます。
また、「三越デパート」と言えば、知らない日本人はほぼいないと思います。福岡市天神にもありますが、日本初の百貨店「三越」の創始者は久留米市出身の日比翁助(ひびおうすけ)氏です。ちなみに、「三越百貨店」の玄関前にある三越ライオンですが、このライオン像を創ったのも日比翁助氏です。あまりのライオン好きに、息子に雷音(ライオン)という名を付けたほどです。
ちなみに、玄関前にライオン像が2体あるのは、「日本橋本店」、「仙台三越」、そして「福岡三越」のみで、あとの7店舗は1体だけです。
そして、みなさん健康飲料の「ヤクルト」をご存じだと思いますが、この「ヤクルト」の発祥は福岡市中央区唐人町です。ヤクルト菌・シロタ株を発見した代田稔博士は。「ハガキ1枚、煙草1本の値段で買えるヤクルト」の理念の元に研究開発を積み重ね、「代田保護菌普及会」を作り、ヤクルトの販売を開始したのが福岡市中央区唐人町です。
さて、松本清張、森鴎外という文壇の著名人の名前が出ましたが、北原白秋、 夢野久作、林芙美子、大西巨人、長谷川町子、井上光春などなど、文壇に名を遺した作家も多くいます。
そして、アフガニスタンなどで人道支援活動を行った医師・中村哲氏。
また、炭鉱王であったり、学術・研究者、政治家、作家、芸術家。更には、芸能人やミュージシャンにあっては枚挙にいとまがないほどです。
このように、オール福岡でみると、福岡県出身の著名人、偉人として名を残している人たちが多くいます。こうした人たちの功績、実績は、まさに 次の世代の進路となり、光明となるものです。
Q4:そこでお聞きします。
こうした、本県出身の偉人たちの足跡(そくせき)をどのようにして子どもたちに伝えていくのか、それぞれお答えください。
【義務教育課長答弁】
例えば、道徳科の学習においては、中村哲氏など、福岡県にゆかりのある先人の働きが取り上げられている教科書もある。子供たちは、その生き方や考え方について、友達と共に考え、議論することをとおして、同じ福岡県で育っている自分に誇りをもったり、福岡県に対する愛情を深めたりすることができる。
このように、社会科、道徳科、総合的な学習の時間を中心とした教育活動をとおして、福岡県が誇る先人の働きや郷土への子供たちの興味関心を喚起し、一人一人の興味関心に応じた調べ学習等につながるよう充実を図ってまいる。
【高校教育課長答弁】
高校では、例えば門司大翔館高校の学校設定科目である「日本史発展」の「近現代の門司と世界」をテーマとした学習の中で、「出光商会」を設立した出光佐三氏を取り上げることとしている。
また、ありあけ新世高校の「有明学」では、三井財閥の総帥となった団琢磨氏をはじめ、郷士にゆかりのある先人の業類について学んでいる。
今後ともこうした活動を通して、本県にゆかりのある先人についての高校生の興味・関心を喚起してまいる。
高校入試にしても、大学入試にしても、日本史の勉強は、いわゆる通史であり、中央の歴史です。
入試的には仕方がないことからもしれませんが、郷土の歴史を知らずして、郷土愛は生まれません。教育庁として、是非とも、これまで以上に郷土史の充実に取り組んでください。
次に、福岡県域確定150年についてお尋ねします。
冒頭にも述べましたが、2021年の「福岡県誕生150周年」にあたり、私は2022年2月の『2月定例会』一般質問において服部知事を質したところ、知事は「廃藩置県により福岡県という自治体名が誕生した1871年を起点として、節目の年である1971年に100周年事業、2021年に150周年事業を実施した。」と答えられました。
その時、私が質したのは、1871年当時、県域にあった7つの藩、すなわち、福岡藩、秋月藩、豊津藩(旧小倉藩、支藩として千束藩[ちづかはん])、中津藩、 久留米藩、柳河藩、三池藩があり、これらが統合され、福岡県、三潴県、小倉県の3県に収れんされたわけで、福岡県という自治体名が誕生したときには、県域では福岡県、三潴県、小倉県と3つの県があったわけです。
その3県が統合されて現在の県域が確定し、福岡県に統一されたのは1876年、明治9年ですから、いまから2年後、2026年に150年を迎えるわけです。
なお、県庁舎が福岡市中央区舞鶴の「福岡城」内から天神に移ったのも、1876年、明治9年ですから、県庁天神移転150年にもあたります。
現在の福岡県の県域、いわゆる北は北九州市、南は大牟田市、西は糸島市、東は豊前市・築上郡といった、県内60市町村のエリアが確定したのは1876年、明治9年と述べましたが、福岡県域確定150年となる2026年には、知事は周年行事を予定してないとのことでした。
しかし、本県の歴史を正しく県民に周知するためには、教育委員会所管の「九州歴史資料館」、「県立図書館」といった公的施設を活用し、本県の 歴史を周知するべきだと考えます。また、県の広報誌を使って県民に周知するということも必要だと思います。
Q5:そこでお聞きします。
福岡県域確定150年となる2026年にあたり、県としてどのような取り組みを行うのか、お尋ねします。
【教育振興部長】
郷土の歴史資料を所蔵している九州歴史資料館や県立図書館においては、県域確定150年を 契機として、例えば、福岡県の成り立ちや歴史について、年表や当時の写真、記録などを分かりやすくまとめたパネル展示や、地図や雑誌、市町村の広報誌など、これまでの150年を振り返ることのできる資料の 展示等の実施を検討してまいる。
Q6:最後に、副教育長にお聞きします。
郷土を愛し、福岡を愛する子どもたちを育てるため、県教委として、今後、どのような学校教育を作っていくのか、その方策と決意をお示しください。
【副教育長】
郷土の歴史や文化を学び、福岡にゆかりのある先人の生き方や考え方に触れることは、郷土に対する愛情や誇りをもつことはもちろんのこと、生きる勇気や知恵などを感じ、未来への希望をもって前進することにつながるものと考えます。
社会科、道徳科等、これらの教科での学習や、図書館等での学びを通して抱いた興味関心を膨らませながら、学びを広げることができるよう、取組の充実を図り、子供たちの郷士を大切にしようとする心を育んでまいります。
いま、副教育長からも答弁を頂きました。
入試対策としての日本史の勉強は一向に構いませんが、郷土の歴史を知らずして、郷土愛は生まれません。
そうした意味で、県教委として、しっかりと郷土史についても取り組んで頂きますよう要望申し上げ、質問を終わります。