2025年(令和7年)2月定例県議会
民主県政クラブ県議団 代表質問 答弁骨子

質問

1.米国大統領就任に伴う本県への影響について

    •  はじめに、アメリカ大統領の就任に伴う本県への影響についてお聞きします。
    •  先月20日、ドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領に就任しました。それに伴い、九州の経済ひいては本県経済に大きな影響をおよぼすと懸念されるのは、アメリカ向け輸出品に対する追加関税ではないでしょうか。
    •  2023年の本県輸出金額において、アメリカ合衆国は中国に次いで2番目に多く、全体の約14%を占めています。2023年12月には、九州の自動車関連企業の約半数にあたる621社が立地しており、追加関税が実施されれば米国向け輸出にも大きな影響が出ることは必至です。
    •  
    •  そこで、トランプ大統領就任を受け、自動車産業をはじめとする本県の産業や経済への影響をどのようにお考えか、知事の見解をお答えください。その上で、それらの影響を最小限にすべく何らかの支援を考えているのか、お教えください。

 

答弁

問 トランプ大統領就任に伴う本県への影響について(知事答弁)

    • トランプ大統領は、今月1日、カナダとメキシコからの輸入品に対して25%、中国からの輸入品に対して10%の追加関税を課す大統領令に署名し、これを4日から発動すると発表した。その後の協議により、カナダとメキシコに対する発動は1か月延期されるとの報道があっている。
        • 一方、今のところ、我が国からの輸入品に対する追加関税について言及はない。
    • 本県への影響について、予断をもってお答えすることはできないが、本県の基幹産業であり多くの部品サプライヤーを抱える自動車メーカーをはじめ、ロボットなど様々な業種の企業がアメリカに輸出を行っており、また、カナダやメキシコに製造拠点を持つ県内企業もあるため、このような企業の生産や業績に与える影響について懸念しているところである。
    • こうしたことから、今後、関税の影響を受けるとみられる県内企業と緊密な情報共有を図りつつ、アメリカの政策動向が本県の産業や経済に与える影響について、引き続き注視してまいる。

質問

2.下水道管路の維持管理について

    •  下水道管路の維持管理についてお聞きします。
    •  先月28日、埼玉県の県道交差点で道路陥没事故が発生し、走行中のトラックが転落して、ドライバー1人の安否が気遣われています。
    •  今回の事故は、道路下に埋設された下水管が破損し、土砂がそこに流れ込んで地下が空洞化し、道路が陥没したことが原因と報道されています。
    •  国土交通省は7都府県に対し、今月7日までに下水管の緊急点検を行い、国に報告するよう要請し、それ以外の道府県に対しても、下水道を適切に管理し、異常が見つかれば対処を行うよう要請しています。
    •  管路の老朽化は全国的に進行しており、点検と、耐震化を含めた更新は一刻の猶予もない状況です。また、県内各自治体で管理している下水道についても点検が必要です。
    •  
    •  そこで伺います。本県の流域下水道において、耐用年数50年を超えるものがどのくらいあるのかお示しいただいた上で、下水道管路の維持管理における今後の対応についてお答えください。
    •  
    •  また、県内各地の下水管の状況を確認するため、下水管内で利用できるドローンなどの点検用機器の導入や、県下各自治体が行う下水管点検に対する財政支援を行ってはいかがと考えますが、知事の見解をお聞きします。

 

答弁

問 本県の流域下水道管路の維持管理における今後の対応について(知事答弁)

    • 本県で事業を実施している8箇所の流域下水道の管路の総延長は約214キロメートルあるが、お尋ねのあった供用開始から50年を経過する管路はない。
    • 今回の事故を受けて、国から要請されている「下水道管路施設に対する緊急点検」の対象となっていないが、県独自の対応として、口径が2メートル以上の下水道管路について、緊急点検を実施している。その結果、直ちに対応が必要な状況は確認されなかった。
    • 本県では、腐食するおそれの大きい箇所については、5年ごとにマンホールからの目視及びカメラによる点検を、10年ごとに下水道管路内を自走式カメラで詳細な調査を行っており、今後も適切な維持管理に努めてまいる。

 
問 下水道点検へのドローンなどの点検用機器の導入や財政支援について(知事答弁)

  • 県及び下水道事業を実施している県内47市町では、定期的に実施する詳細な調査には自走式カメラを用いており、十分に点検できていると考えている。ドローンなどの点検用機器の活用については、国や民間企業の技術開発の動向を注視してまいる。
  • 下水道点検に対する財政支援については、国の交付金制度を活用できることから、市町の職員を対象とした研修会や予算要望のヒアリングなどの場を通じて、関係市町へ引き続き交付金の活用について周知してまいる。

質問

3.戦後80年の県の取組みについて

    •  次に移ります。
    •  1945年、昭和20年8月15日に太平洋戦争が終結してから、本年は80年の節目を迎えます。先の大戦で亡くなられた方々に、ここで改めて哀悼の誠を捧げます。
    •  
    •  そこで1点目に、「戦後80年」に際し、知事はどのような平和への思いをお持ちなのか、そしてその思いをどう県民に伝えていこうとお考えでしょうか、お答えください。
    •  
    •  昨年、ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会、「日本被団協」田中熙巳(てるみ)代表委員は受賞スピーチの中で、被爆者の平均年齢が85歳であることに触れ、「10年先には直接の被爆体験者としての証言ができるのは数人になるかもしれません。これからは、私たちがやってきた運動を、次の世代のみなさんが、工夫して築いていくことを期待しております。」と語りました。長崎原爆の第一投下目標は、現在の北九州市小倉北区にあった兵器工場であり、また現在、被爆者手帳を持つ方の数は、全国で広島、長崎に次いで本県が3番目です。本県は原爆と深いかかわりがあることを、決して忘れてはなりません。
    •  また、終戦間際には本県も度重なる空襲で、人的・物的に多くの被害がありましたが、それを目の当たりにした方々もまた非常に高齢化しており、その実体験を次の世代へいかに継承していくかが喫緊の課題となっています。
    •  
    •  2点目に、戦争と平和に関する伝承者をどう育てるかなど、戦争体験の継承についての知事の考えをお聞かせください。
    •  この項の最後に伺います。わが会派としては、次の世代に平和への願いを継承していくため、全ての小・中・高校の段階でカリキュラムに平和教育が組み込まれていることが望ましいと考えます。
    •  
    •  そこで、知事、教育長の平和教育の必要性に関する見解をお聞かせください。
    •  その上で、教育長にお聞きします。公立の小・中・高校では、どのように平和教育を行っていくのか具体的にお示しください。

 

答弁

問 「戦後80年」に際した平和への思いについて(知事答弁)

    • 戦後80年という節目にあたり、改めて平和の尊さを強く感じている。私たちが享受している平和は、過去の犠牲の上に成り立っているとの思いを新たにするとともに、戦争とは人々の人権を踏みにじるものであり、二度と戦争の惨禍を繰り返すことのないよう、その教訓と平和の尊さを次の世代に引き継いでいくことが重要であると考える。
    • このため、県では、戦火をくぐり抜けた資料を通し、平和の大切さを考える機会を提供するため、毎年、県内2か所で戦時資料展を開催するとともに、戦時資料の市町村等への貸出を行っている。
      •  今年度、戦時資料展については福岡市のアクロス福岡と筑前町の大刀洗平和記念館を会場として、併せて1万3千人を超える方々にご来場いただくとともに、7団体に対し戦時資料の貸出を行ったところである。
      •  さらに、昨年8月1日、2日の2日間、県庁1階ロビーにおいて、戦時の生活の様子や被爆者の声などを紹介する「戦争平和のパネル展」を実施したところである。
    • また、県ホームページ内に設けている「平和文化コーナー」において、戦時資料や戦争体験記、県内市町村が実施する戦争・平和に関する最新のイベント情報を掲載し、県民の皆様に広く情報提供する等の取組を行っているところである。
    • 来年度は、戦後80年という節目であることから、記念行事を開催するための予算を今議会にお願いしているところであり、実施にあたっては、戦後70周年の記念行事も参考にしつつ、次の世代に平和の尊さが伝わるよう工夫してまいりたいと考えている。

 

問 戦争体験の継承について(知事答弁)

    • 戦争を体験した世代の方々が高齢化し減少していく中で、悲惨な戦争の教訓と平和の尊さを次の世代に継承していくことがますます重要となっている。
    • 県では、戦時資料展の開催や戦時資料の貸し出しに加え、
      • 戦後50周年の節目に募集し寄せられた戦争体験記
      • 元特攻隊員の方による戦争体験談などを収録した戦後70周年の記念行事の動画
      • を県ホームページの「平和文化コーナー」に掲載する等、戦争体験の記録を残す取組を行っており、戦後80周年の記念行事についても、記録として後世に残していきたいと考えている。
      •  こうした「戦時資料」や「戦争体験の記録」の活用により、戦争体験の継承が進むよう、市町村や小中高等学校に呼び掛けることとしている。
    • また、毎年8月15日に開催している「福岡県戦没者追悼式」及び「戦没者遺族が経験した戦争を語る会」に若い世代の方にも参加いただき、平和の尊さや、命の大切さを考える機会としていただいているところである。
    • さらに、福岡県遺族連合会が、戦争体験者の遺族や戦後生まれの遺族を、県や市町村、学校等に派遣し、戦争体験を伝える「平和の語り部事業」を実施しており、県での活用はもとより、市町村や小中高等学校でも活用していただけるよう周知しているところである。
    • 今後とも、こうした取組を通じて、戦争の悲惨さと平和の尊さを次の世代に継承してまいる。

 

問 平和教育の必要性に関する見解について(知事答弁)

      • 悲惨な戦争の記憶を風化させないよう、その教訓と平和の尊さを次の世代に継承していくうえで、平和教育は重要な役割を果たすものであり、県内全ての小・中・高等学校で取り組む必要があると考えている。
      • 私立学校についても、学習指導要領の理念に基づき、戦争体験者の講話や国内外の戦争資料館への訪問など、平和に関する教育を行っている学校がある。
        •  また、多くの学校法人では、建学の精神や教育理念そのものに「平和」を掲げ、道徳や私立ならではの宗教の時間などで平和を柱とした教育が行われている。
        •  戦後80年の節目を契機に、こうした取組がさらに深まることを期待している。

 

問 平和教育の必要性と今後の取組について(教育長答弁)

      • 現在、県内すべての公立小中学校、県立高校では、学習指導要領に基づき、児童生徒の発達段階に応じた平和教育が行われている。
      • その具体的な内容としては、例えば、小中学校では、夏休みの出校日に合わせて、DVDなどの教材を用いて戦争の悲惨さを学んでいる。
        •  また、高校では、すべての生徒が履修する「歴史総合」の授業で、近現代の戦争の原因や影響等について多面的に学び、戦争を防止し、平和で民主的な国際社会を実現するための方策について、生徒同士が具体的に議論する活動などを行っている。
        •  さらに、修学旅行で長崎、鹿児島、沖縄などを訪問するにあたっては事前学習を行ったうえで、戦争関連の資料館等を訪れ、戦争体験者や戦時資料にじかに学ぶ活動などが実施されている。
      • 県教育委員会としては、戦争は人々の人権を踏みにじるものであり、二度と戦争の惨禍を繰り返すことのないよう、引き続き、学校における平和教育の取組を促してまいる。

質問

4.孤独・孤立対策について

    •  次に、孤独・孤立対策、ホームレスの対策について、知事にお聞きします。
    •  先日、我が会派では長年ホームレス支援に携わられている認定NPO法人抱樸の奥田理事長を招いて勉強会を行いました。認定NPO法人抱樸は、北九州市に様々な機能を持った複合型社会福祉施設を建設し、相互支援・相互扶助を実現するための新たな事業「希望のまちプロジェクト」を進めようとしています。勉強会で奥田氏は、もう一度立ち上がる気持ちを失った方には、その方の人生を諦めないように支える人が必要で、伴走型の支援が重要と話されていました。
    •  厚労省の調査によると、全国のホームレスの数は、2003年の25,296人から年々減少し、2024年1月時点で、能登半島地震で調査未実施の石川県を除いて2820人でした。このうち男性は2575人、女性は172人、防寒具を着込むなどして性別が判別できなかった人は73人でした。都道府県別で最多は大阪府の856人、福岡県は全国で4番目に多い163人で、そのうち、女性14人に対して男性は149人と、男性が圧倒的に多いことがわかります。
    •  NPO法人抱樸は、地域の生活に戻った元ホームレスの方が再び路上生活に戻ることのない様に見守り活動などを行っており、こうした活動は孤独・孤立対策になるものと考えています。
    •  孤独・孤立対策には、抱樸に代表されるNPO法人の存在がきわめて重要ですが、現場で支援活動を行うNPO等の個々の活動基盤が「ぜい弱(じゃく)」であることが長年問題視されており、内閣府の孤独・孤立対策推進室では孤独・孤立対策推進交付金事業を通じ、NPO法人の運営能力向上や、活動支援をおこなっています。
    •  
    •  そこで1点目に、本県内にホームレスを支援するNPO法人は何か所あるのか、また本県でも孤独・孤立対策推進交付金を活用するなど、ホームレスを支援するNPO法人の活動基盤を強化していくことが必要と考えますが、知事の見解をお聞かせください。
    •  
    •  2点目に、福岡県立大学では、福祉専門職を養成しています。大学と、NPO法人など民間の支援団体とが連携し、より孤独・孤立支援に役立つ人材育成をおこなってはいかがでしょうか。
    •  
    •  3点目に、孤独・孤立から再びホームレスになることがない様に、市町村の福祉担当者や地域住民などに対し、孤独・孤立支援に関する知識や理解を深める取組みを行っていく必要があると考えますが、知事の考えをお聞かせください。

 

答弁

問 ホームレスを支援するNPO法人について(知事答弁)

    • 福岡県内で設立が認証されたNPO法人のうち、その定款の目的や事業に「ホームレス」や「野宿生活者」への支援が記載されている団体は、県所轄分で2か所、政令市所轄分で11か所と承知している。
    • 県では、共助社会づくり推進のため、コラボステーション福岡を設置し、その担い手であるNPO法人に対して、
      • 会費や寄附による資金調達、労務管理、人材育成などの設立・運営に関する無料運営相談
      • 税理士による会計・税務処理の無料相談
      • 事務能力向上のための運営力向上セミナー
      • を実施している。
      •  この取組については、毎年、ホームレス支援を行う13団体を含む全てのNPO法人に対してチラシを配付するとともに、ホームページやメールマガジンにより周知を図っているところであり、今後ともNPO法人の活動を支援してまいる。

 
問 福岡県立大学における孤独・孤立支援に役立つ人材育成について(知事答弁)

    • 福岡県立大学人間社会学部では、低所得者の就労支援に関する授業のほか、ホームレスの相談事例を用いたグループディスカッションやロールプレイにより、実践的な支援の技術を学ぶ演習を、選択科目として実施している。
    • また、NPO法人抱樸をはじめとするホームレス支援の民間支援団体との学術研究協力を行っている教員が、都市貧困問題等の地域課題の解決手法を学ぶ授業を行っており、大学は、中期計画において、高度福祉社会の実現に力を発揮できる人材育成のため、専門教育を推進することを掲げている。

 
問 孤独・孤立に対する理解を深めるための取組について(知事答弁)

    • 孤独・孤立に至る要因は、健康、仕事、収入、結婚、住まい、人間関係などであったり、また、それらの課題が複合的に関連している。
    • 県では、このような住民の複合的な課題に対応するため、女性・DV被害者、引きこもり、生活困窮者、就労などの支援機関をまとめた「福岡県社会資源名簿」を作成し、市町村の相談窓口で職員に活用いただいている。
      •  また、多種多様な主体が連携した、相談対応、伴走支援などの具体的な手法について解説した手引を作成し、市町村の福祉担当者を集めた研修会で周知を図っているところである。
    • 孤独・孤立の状態は、人生のあらゆる段階において、誰にでも生じ得るものであり、当事者が悩みを家族や知人にも相談できない場合もあることを踏まえると、行政だけでなく周りで生活する方が声を聞ける、または声をかけやすい環境を整えることが重要である。
    • このため、地域全体で孤独・孤立の支援についての理解が深まるよう、見守り活動などを行う民生委員・児童委員に対する研修や地域住民の方への「福祉入門教室」において、孤独・孤立に至る背景・要因を学んでいただくことや、当事者やその家族に諦めずに声かけを続けたことにより地域とつながった事例を紹介してまいりたいと考えている。

質問

5.救急医療について

    •  救急医療現場では医師の長時間労働が常態化しており、時間外労働の上限規制を定めた医師の働き方改革が2024年4月に施行され、特に救急科については本県でも8医療機関において診療科の制限が起きるなど救急現場の更なる逼迫が懸念されています。
    •  総務省消防庁によると、2022年の国内の救急車の出動件数は約764万件で統計を取り始めた1963年以降最多となりました。搬送者の半数近くは入院に至らない軽症者だったとのことです。
    •  こういった救急現場のひっ迫に対し、各自治体では、様々な取組が行われています。
    •  東京都や名古屋市などの自治体では救急需要増大時に、「救急車ひっ迫アラート」をホームページやSNSで発出しています。これは、救急要請の急増により、救急隊を増やして対応している場合等、救急出場体制のひっ迫度合いを伝えるとともに、救急車の適時・適切な利用を強く訴えかけることを目的としています。
    •  緊急性の低い救急搬送が多くなっている茨城県では、病床数200床以上の大きな病院に搬送の6割以上が集中しています。そこで昨年12月2日から、救急車要請時の緊急性が認められない場合は、茨城県内22の大規模病院において、最大13,200円の「選定療養費」を病院が患者から徴収する運用を始めました。都道府県単位で制度として適用するのは初めてのことです。
    •  しかし、救急医療は社会のセーフティーネットであり、こういった運用変更は生活に困っている方々などの受診抑制につながる懸念もあります。
    •  また、119番に通報するか迷った時のための救急医療電話相談「♯7119」は、本県を含めて31都府県などで利用されています。2023年、国内において213万件の利用がありました。これは看護師ら専門家が症状などを聞き、救急車を呼ぶかどうか、また、受診すべき医療機関、受診のタイミングなどを助言しています。
    •  救急医療がひっ迫する現在、救急車をタクシー代わりに使っているような実例もあり、まずは重篤な救急患者の受入れなど、病院が本来の役割を果たし、救急医療体制を維持することが重要です。
    •  
    •  そこではじめに、本県における近年の救急搬送者数とそのうち軽症者と見られる方の割合がどのくらいかをお教えください。その上で、本県の救急医療体制を維持するための方策をお聞かせください。
    •  
    •  現在、119番の通報者がスマートフォンで通報する際、必要に応じて、ビデオ通話を活用した口頭指導、Live119という映像通報システムが、東京をはじめ全国的に広がっており、県内では、福岡市周辺16市町で開始されています。
    •  これは通報者がスマートフォンの場合、救急現場などの映像を消防司令センターなどに送信できる仕組みです。センター職員は送られてきた映像を見ながら応急手当ての方法を指導することができ、また、応急手当てのやり方がわかる動画を通報者に送信し、通報者はその動画を見ながら応急手当てを実施できるというサービスです。
    •  
    •  そこで2点目に、現在福岡県でLive119のようなシステムを提供している自治体、及び消防組合はどのくらいあるのか、また利用状況をお教えください。その上で、福岡県全域で早急に使えるようにするべきシステムだと考えますが、知事の考えをお教えください。
    •  
    •  また、本県においては、音声による119番通報が困難な聴覚・言語機能障害者が円滑に消防への通報を行えるようにするシステム、「NET119緊急通報システム」があります。このシステムが直方市、田川地区消防組合、飯塚地区消防組合のみ利用できません。
    •  
    •  そこでこの項の最後に、この「NET119緊急通報システム」について、残りの3団体も知事の働きかけで利用できるよう助言すべきだと考えますが、見解をお聞かせください。

 

答弁

問 救急搬送の状況と救急医療体制について(知事答弁)

    • 近年の救急搬送者数は、
        • 令和3年は22万6,670人で、そのうち、入院加療を必要としない軽症者の割合は36.0%、
        • 4年は25万4,728人で、うち軽症者の割合は39.6%、
        • 5年は27万2,576人で、うち軽症者の割合は40.5%となっている。
    • 救急要請が増加する中で、救急医療体制を維持するため、県では、広報番組や啓発チラシなどにより、増加する救急搬送の現状を伝え、県民の皆さまに、救急車の適正利用を呼びかけている。
      •  また、「救急医療電話相談#7119」を設置し、救急車を呼ぶべきか迷った場合の助言や、受診可能な医療機関の案内を行っている。
    • さらに、医療機関の診療時間外となる休日・夜間帯の医療を確保するため、地域の「休日・夜間急患センター」に出務する医師や看護師の調整等を行う郡市医師会の活動を支援しているところである。
    • 今後も高齢化の進行による、救急医療への影響が懸念される。
      •  県としては、救急車の適正利用を引き続き呼びかけるとともに、県内13区域の地域医療構想調整会議において、救急受入患者の早期の転退院に向けた取組など、地域の実情に応じた取組の協議を行い、救急医療体制の維持・確保に努めてまいる。

 
問 映像等を活用した119番通報システムの導入状況等について(知事答弁)

    • このシステムは、消防指令センターが通報内容から必要と判断した場合、通報者のスマートフォンへ映像送信用のURLを送信し、通報者がこれを起動することで、通報者が現場からの映像を消防指令センターへ送信できるようになるものである。
      •  この映像を通じて消防指令センターが、事故等の現場状況を詳細に把握できることから、通報者に対する口頭での応急手当の指導や、消防隊への詳細な状況伝達に利点があるものと認識している。
    • 県内の導入状況については、議員ご指摘のとおり、福岡市周辺の16市町が、福岡都市圏消防共同指令センターにおいて、令和4年9月1日から運用を開始している。
      •  この共同指令センターは、福岡市及び5つの一部事務組合で、119番通報の共同受付を実施しているところである。
    • その利用状況は、一昨年は93件、昨年は177件実施されている。
    • 消防・救急の各種通報システムの導入は、地域の実情に応じて、各団体で検討されているため、各消防本部も参加する市町村等防災関係課長会議の場などを通じて、映像通報システムが有効に活用された事例を紹介するなどし、検討を促してまいりたいと考えている。

 
問 NET119緊急通報システム未利用団体に対する導入の働きかけについて(知事答弁)

    • このシステムは、事前に登録することで、聴覚や発話の障がいなどにより、音声での119番通報が困難な方が、スマートフォン等の画面操作やチャット機能で、119番通報することができる。
      •  また、スマートフォン等の位置情報を活用して通報者の居場所を消防に通報できる点は、ファックスやメールによる119番通報よりも優れているものと認識している。
    • 議員ご指摘の未利用団体のうち、飯塚地区消防組合及び福岡県田川地区消防組合においては、令和8年度の導入に向けて準備が進められているところであり、直方市においても、現在導入を検討中と聞いている。
    • 今後、同市に対し、音声での119番通報が困難な方への対応についての考え方を確認するとともに、NET119緊急通報システムの利点等について紹介し、聴覚や発話に障がいのある方が円滑に消防へ通報できるよう必要な助言を行ってまいる。

質問

6.県職員の人材確保と働きがいのある職場環境づくりについて

    •  次に、県職員の人材確保と働きがいのある職場環境づくりについて、知事にお聞きします。
    •  近年、公務員離れが加速し多くの自治体で人材確保が問題となっています。本県では、来年度から、民間企業が内々定を出す時期より前に合格発表を行う春季県職員採用試験を新設する方針を出し、12月定例会でその予算が可決されました。採用試験の見直しや職場環境の改善を進めて、優秀な人材を確保したいとしています。
    •  しかし、総務省の「社会の変革に対応した地方公務員制度の在り方に関する検討会」において、有識者の委員が説明された「地方公務員の勤務条件等に関する調査」を基に試算した結果、本県の2021年度の大学卒業程度Ⅰ類試験合格者の採用辞退率は30.9%であり、福岡市14.3%、北九州市13.8%と比較しても、高い数値となっています。
    •  中でも技術職の人材確保が難しく、業務に支障がでていることが全国的にクローズアップされています。また、一旦公務員となっても離職する若年層が増えていることも大きな課題となっています。
    •  我が会派は、試験日程を早めるだけでなく、職員のやりがいづくり、更なる職場環境の改善が必要だと考えます。
    •  
    •  そこで、今年度の本県職員採用試験における採用者数、自己都合による退職者数とその傾向についてお答えください。また、実質の欠員数の傾向についてもお示しください。併せて、採用辞退が発生することに対し、知事はどうお考えになっているか、お聞かせ下さい。
    •  
    •  2点目に、特に人材確保が難しいと言われている技術系職員について、本県で欠員が生じている職種とその人数をそれぞれお示しください。今後、どのように補充対策を強化していくのか、お聞かせください。
    •  
    •  本県では、これまでの行政改革による長期的な職員数の減少や集中改革プランの推進等により、業務が質・量ともに増大しています。加えて、自然災害や感染症などが発生した場合には、職員は通常業務に加え緊急的な業務に対応しなくてはならず、時間外勤務が増大することになります。職員の負担感の増加は、職員の心身の不調をきたす要因となっており、総務省の調べによると、全国の地方公務員のメンタルヘルス不調者数は25年前と比べ8.7倍となっており、本県も同様の増加傾向にあります。
    •  県民に質の高い行政サービスを提供し続けるためには、職員がそれぞれの能力を最大限発揮し活躍できる業務の効率化や組織風土を醸成することが求められており、働きがいのある職場環境をつくることが人材確保においても重要な要素となります。
    •  
    •  そこで、3点目に、職員のメンタルヘルス不調者数の直近3か年の推移と職場復帰の状況をお示しください。また、職員のメンタルヘルス不調の要因をどのように分析し、不調者を出さないための取組み、不調によって休んでいる方が円滑に職場復帰するための取組みをどのように行っているのか、お答えください。
    •  
    •  4点目に、知事が考えておられる「職員にとっての働きがい」とはどのようなものかお答えいただくとともに、併せて、自己都合による退職者を減らし、働きかいのある職場づくりを進めていくため、快適な労働環境の整備や職員のモチベーションの向上など、職員のニーズを踏まえた取組みをどう行っているのかお聞きします。

 

答弁

問 採用者数等の傾向と採用辞退に対する認識について(知事答弁)

    • 県では、民間企業への転職等を理由とする自己都合退職者が増加傾向にあり、5年前の令和元年度と比較すると、今年度は約2倍の80名になる見込みである。
      •  また、大規模災害からの復旧・復興事業、児童相談所の機能強化といった行政ニーズに対応するため、採用者数を増やしており、5年前と比較すると、今年度は約1.3倍となる329名を採用している。
    • 今年度4月時点では、事務職の欠員は生じていない。一方、技術職では十分な受験者数が確保できず、欠員が生じており、その数も増加傾向にある。
    • 次に採用辞退については、ご質問にあった30.9%という採用辞退率は、警察職員や教育行政の辞退率を含んでおり、知事部局では、ここ数年、約16%で推移している。これは、県を受験される方の多くが、国や市町村と併願されており、試験結果によって一定数の方が辞退されるためである。
      •  県としては、試験合格者に対して、国や市町村にはない、県職員としての仕事のやりがいや魅力をアピールしてまいる。また、職員が働きやすく、高いモチベーションを持つことができるよう、執務環境を整備するほか、休暇取得の促進など仕事と生活の調和が実現できる職場づくりを進めているところである。これらの取組によって、優秀な方が辞退されないよう取り組んでまいる。

 
問 技術職員の欠員状況と補充対策について(知事答弁)

    • 今年度4月時点において、
      • 職業指導員3名
      • 建築、獣医師で各2名
      • 土木、化学で各1名など、
      •  合計9職種で16名の欠員が生じている。
    • このようなことを踏まえ、新たに来年度試験から土木や建築等の技術職を対象とする民間企業等経験者を採用することとしている。この採用試験は、働いている方が受験しやすいよう、お住いの地域で受験できる方法で実施する。
      •  また、特に採用が困難となっている獣医師については、獣医学部が多くある北海道でも試験を実施する。
    • このほかにも、
      • 福岡県への関心を持ってもらうためにSNSや公共交通機関での広告の実施
      • 福岡県内で就職を希望する全国の大学生に対し、採用試験情報をダイレクトメールで送付
      • 職種別に若手職員が仕事のやりがいや内容、自身の体験談について語ったPR動画の配信
      • 県土整備事務所等、技術職が活躍する出先機関でのインターンシップの拡大
        • といったことに取り組み、より多くの方々に受験していただくことによって、技術職員の確保につなげてまいる。

 
問 県職員のメンタルヘルス対策について(知事答弁)

    • メンタルヘルス不調による30日以上の病気休暇者及び病気休職者の数は、直近3年間で令和3年度から222人、241人、248人と増加しており、10年前の約2倍となっている。
      •  このうち、180日を超えて休んでいる病気休職者の数は、3年度から84人、90人、96人となっている。その復職に当たっては、再発の予防を図る観点から健康管理審査会における審査を必須としており、審査会を経て復職した職員数は3年度から38人、40人、35人となっている。
    •  メンタルヘルス不調による病休者及びその上司から産業医が聞き取ったところ、不調の主な要因は、回答の割合が高い順に、仕事の質、仕事上の人間関係、仕事の量、人事異動による職場環境の変化、家庭における問題と、多岐にわたっている。 
    • こうしたことを踏まえ、県では、「福岡県職員心の健康づくり計画」に基づき、メンタルヘルス不調の未然防止、早期発見・早期対応、不調者の職場復帰支援に重点的に取り組んでいる。
    • 具体的には、未然防止や早期発見・早期対応については、
      • 事業者として職員に対する年1回以上の実施が義務付けられているストレスチェックの年2回実施
      • 高ストレス者が仕事上の悩みなどを産業医や保健師に気軽に相談できるよう、オンライン面談や出張面談、勤務時間外の面談の実施
      • 新規採用職員や初めて本庁勤務となった若手職員に対して、事前に質問票の回答を求め、生活習慣や体調などを把握した上での保健指導
      •  などに取り組んでいる。
      •  加えて、今年度から、本庁の新任係長を対象に、経験豊富な上司との定期的な面談の機会を設け、業務上の悩みや相談、今後のキャリア形成等への助言・支援を行うメンター制度を導入している。
    •   また、職場復帰支援については、
      • 所属での勤務軽減やサポート体制に関する支援策の作成
      • 復職者の試し出勤
      • 復職後の保健師による定期的な体調確認
      •  などを実施しているところである。
    • 今後も、こうした取組を通じ、職員の心の健康づくりを推進してまいる。

 
問 「職員にとっての働きがい」について(知事答弁)

    • 「職員にとっての働きがい」とは、人間関係が円滑であり、コミュニケーションが活性化している職場において、
      • 自らのスキルや経験を活かすことができること
      • 県民の皆様の暮らしや社会に貢献できること
      • 自身の成長を実感できること
      •  に加え、ワーク・ライフ・バランスの実現が図られ、職員が健康で充実した生活を送れていること、こうしたことが大事であると考えている。
    • こうした考えのもと、コミュニケーションを円滑化する観点から、
      • 本庁の一部の課において、フリーアドレスを導入するなどオフィスをモデル的に改装し、その効果を検証する取組を実施するとともに、
      • 職場の活性化等について、職員全員で話し合い、改善に取り組む「職場改善運動」
      •  などを実施しているところであり、先日も、DXを活用した新たな取組の提案がなされ、「改善実行大賞」として表彰したところである。
    • また、自らのスキルや経験を活かし、自身の成長を実感できる取組として、
      • 若手職員の自由な発想を生かし、業務の改善・効率化を実現する「若手職員による業務の見直し」
      • 部局横断の若手職員を中心としたグループが、県政について自主的に研究し、県の将来の発展に向けて取るべき政策を提言する「未来への提言」
      •  などに取り組み、私自身が職員から直接意見を聴き、県政に活かすといった取組を行っている。
    • さらに、ワーク・ライフ・バランスの充実については、
      • 在宅勤務の手続きの簡素化や連絡手段の充実など、在宅勤務を活用しやすい環境の整備
      • 8時から10時までの間に30分ごとに設定した出勤時刻を選択できる時差通勤制度の導入
      •  などに取り組んでいる。

質問

7.医薬品不足への対応について

    •  次に、医薬品不足への対応について知事にお聞きします。
    •  2020年12月以降、大手を含む複数のジェネリック医薬品メーカーで医薬品の不適正な製造が発覚し、生産や供給を一時停止する事態となりました。これをきっかけに、他の医薬品メーカーに注文が集中し、咳止めや抗生剤など多くの医薬品の供給が追い付いていない「薬不足」の状況が3年以上続いています。
    •  その上、毎年実施される薬価改定にともなう薬価の引き下げなどにより採算が取れない薬品は製造を中止したり、設備投資ができず、メーカーからは「なかなか増産が難しい」との苦悩する声が上がっています。
    •  そこに追い打ちをかけるように、ことしの冬は、新型コロナ、マイコプラズマ肺炎、そして特にインフルエンザが流行しました。
    •  
    •  そこでまずはじめに、本県の医薬品不足の現状をお示しください。その対策をどのようにお考えか、知事の見解をお聞きします。
    •  
    •  医薬品不足が長期化する中、各メーカーは増産に向け新工場建設などを進めており、例えば、沢井製薬は飯塚市の第2九州工場に新固形剤棟を竣工し、生産能力が20億錠分追加される見込みとなりました。
    •  しかし、これまでの経緯からジェネリック医薬品に対する県民の不信感はぬぐえません。今年度から5年間の「第4期福岡県医療費適正化計画」では「ジェネリック医薬品製造所に対する監視体制の強化及び医療機関や薬局等に対する協力依頼」を目標達成に向けた施策として挙げています。
    •  
    •  そこで2点目に、県内にジェネリック医薬品製造所は何か所あるのか、それに対し、県はどのように監視体制の強化を行っていくのか、不適正な製造をチェックできる体制ができるのか、お聞きします。
    •  
    •  医薬品不足の解消には、適正使用を推進することも必要です。高齢になると、複数の病気を持つ人が増え、通院する医療機関や服用する薬品の数が多くなるため、同じ効用を持つ薬を重複して飲んだり、飲み合わせの悪い薬を同時に服用してしまい、かえって有害になってしまうことがあります。この「ポリファーマシー」という多剤投与による有害事象はかねてから問題視されており、厚労省も薬剤種類数の適正化に努めています。
    •  
    •  そこで3点目に、県では医薬品の適正使用をどのように進めてきたのか、今後、更なる推進が必要と考えますが、今後の取組についてお聞かせください。
    •  
    •  新型インフルエンザ等対策特措法に基づき、国と都道府県は、4,500万人分を目標として、抗インフルエンザ薬の備蓄を進めており、本県においても「福岡県新型インフルエンザ等対策行動計画」に基づいた備蓄が行われています。抗インフルエンザ薬の使用期限は5年から10年であり、備蓄薬の期限が切れた場合、廃棄していると聞いています。
    •  
    •  そこでこの項の最後に、本県の備蓄量はどの程度あり、これまでに期限切れで廃棄した備蓄薬はどの程度だったのか、お示しください。
    •  
    •  その上で、今後も季節性インフルエンザの大流行が続き、医薬品が不足する場合、期限切れが近い備蓄薬について、メーカーなどに購入価格で返品し、それを再び、市場へ供給するなど、廃棄量をできるだけ少なくする仕組みを検討してはいかがかと考えますが、見解をお聞かせ下さい。

 

答弁

問 医薬品不足の現状について(知事答弁)

    • 国によると、現在、一部の咳止めや抗生剤、局所麻酔薬などにおいて、出荷停止や出荷量の制限が行われており、全国的に入手しにくい状況となっている。
      •  本県でも、県医薬品卸業協会に確認したところ、同様の状況となっている。
    • このような状況を踏まえ、国では、医薬品の安定供給を図るため、
      • 製造販売業者への増産要請
      • 医薬品の供給状況の公表
      • 不採算となった品目の薬価引上げ
      • などを実施している。
      •  県においても、医療機関や薬局に対し、過剰な発注を控えるとともに、医師の判断に基づく最少日数での処方に努めるよう、協力を要請しているところである。

 
問 ジェネリック医薬品製造所の監視体制について(知事答弁)

    • 県内には10か所の製造所がある。
      •  全国の製造所において、医薬品の製造方法や試験方法を定めた製造販売承認書の内容のとおり製造されていない事案が複数発生し、県外では、健康被害につながるような深刻な事例もあった。
      •  これを受けて県では、今年度、県内の製造業者に対し、承認書どおりに製造されているか改めて点検させるとともに、不適正な製造がなされないよう、製造所への抜き打ちでの立入調査を実施しているところである。
    • 今後もこうした取組を通じて、ジェネリック医薬品製造所への監視指導を徹底してまいる。

 
問 高齢者の医薬品の適正使用について(知事答弁)

    • 高齢になるほど、服用する薬の数は増加する傾向があり、薬の影響により転倒などが発生しやすくなることから、医薬品の適正使用を推進することが重要である。
    • このため、県では、医師、薬剤師等の関係者による協議会において、有効な取組を検討し、実施している。
    • 具体的には、お薬手帳を集約し、複数の診察券と一緒に持ち運びできる「お薬手帳ホルダー」を高齢の重複服薬者に配布し、全ての服薬情報を容易に把握できるようにした。また、医師や薬剤師等の医療関係者を対象に、服用する薬の数を削減するための研修会を実施しているところである。
    • さらに、重複投薬の確認が可能となる電子処方箋の導入を促進するために必要な補正予算を、今議会において早期議決いただいたところである。
      •  今後もこうした取組により、医薬品の適正使用の推進に取り組んでまいる。

 
問 抗インフルエンザ薬の備蓄について(知事答弁)

    • 県では、国の備蓄方針に従い、現在は5品目の抗インフルエンザ薬、70万7,900人分を備蓄している。
      •  また、使用期限が切れたことにより廃棄した量は、平成18年度に備蓄を開始して以降、これまでに約115万人分である。
    • この抗インフルエンザ薬は、新型インフルエンザ等対策特措法に基づき、いつ発生するか分からない新型インフルエンザ発生時の危機管理の観点から、発生初期の早期の治療用などに必要とされる量を備蓄しているものである。
      •  仮に、季節性インフルエンザなど他の用途に使用した場合、すぐには補充ができず、その間に新型インフルエンザが発生した際には対応できなくなる。このことは、本来の備蓄の目的に反するため、他の用途に使用することはできない。
    • しかしながら、使用期限が切れたことにより大量に廃棄処分されているため、県では国に対し、メーカー等の流通備蓄を増やし、県の備蓄を減らすことで廃棄処分を最小限にするよう要望しているところである。
      •  引き続き、効率的な運用体制に見直すよう要望してまいる。

質問

8.PFAS汚染への対策強化について

    •  次に、PFAS(ピーファス)と呼ばれる有機フッ素化合物の汚染対策強化についてです。
    •  我が会派は、2024年2月代表質問で、県議会で初めてPFAS汚染の問題を取り上げ、知事にその対策を求めました。その後の進捗も含めて質問いたします。
    •  PFASのうち、健康に影響するおそれのあるPFOS(ピーフォス)は2010年から、PFOA(ピーフォア)は2021年から、それぞれ製造・輸入が原則禁止となっています。
    •  まず、PFASの環境汚染の一因となっている「PFOS等含有泡消火薬剤」について、お聞きします。
    •  1年前の代表質問で、PFOA含有の泡消火薬剤が、県内3つの消防本部でいまだに合計930リットル保有されていることが明らかとなりました。これに対し、知事は今後「3つの消防本部で」「専門業者を通じて焼却処理の上、適正に廃棄し、非含有泡消火薬剤への切替えを早期に行うこととなっております」と答弁されました。
    •  
    •  そこで、県内3つの消防本部で保有されていた930リットルの泡消火薬剤の在庫・廃棄状況をお聞きします。あわせて、いつまでに非含有泡消火薬剤へ切替える予定なのかお聞かせください。
    •  
    •  「PFOS等含有泡消火薬剤」については、空港や自衛隊関連施設などでも使用されていたため、環境省は、関係省庁・関係団体と協力しつつ、代替消火薬剤に向けた取組を進める、としています。
    •  
    •  そこで2点目に、本県内で保有する「PFOS等含有泡消火薬剤」の在庫についてお示しください。それに関し、本県にある空港での今後の処分・代替計画について、また、その他の施設へはどのように交換・処分を働きかけていくのか、お聞かせください。
    •  
    •  3点目に、現在保有している「PFOS等含有泡消火薬剤」については、使用しないよう、県内に協力を求める必要があるかと考えますが、見解をお聞かせください。
    •  
    •  次に、水道からのPFAS検出についてお聞きします。
    •  昨年12月24日、国設置の専用水道のうち、暫定目標値を超えた施設のデータが公表され、本県の航空自衛隊芦屋基地が全国で最も高く、1リットル当たり1,500ナノグラムが検出されました。県は、周辺の井戸水を利用している住民に情報提供するとともに、念のため飲用を控えるよう助言を行っています。また、遠賀川など基地周辺河川と、基地内から海や川につながる水路の計8カ所でも、県が水質モニタリング調査を進めているとのことで、近隣の役場には複数の問い合わせが寄せられている状況です。
    •  
    •  そこで4点目に、航空自衛隊芦屋基地専用水道からPFASが検出されたことに対して、県はどのような対応を行ったのか、今回調査を行った、周辺井戸や水路のモニタリング調査結果も含め、お示し下さい。あわせて、今後の対応方針についても併せてお聞かせください。
    •  
    •  環境省と国土交通省は、PFASに特化し、小規模な水道事業者も対象とした水道水の全国調査を初めて実施し、その結果を11月に公表しました。本県では、国の暫定目標値は超えなかったものの、9の事業者でPFASが検出されました。
    •  現行では、暫定目標値を超えても、水質改善などの対応は「努力義務」に留まります。環境省は、暫定目標値を水道法上の「水質基準」に引き上げ、対応を事業者に「義務」化する方向で検討しています。このようにPFAS汚染対策が強化されようとする中、今回検出された芦屋基地のみならず、他の場所でも更なる調査と対策が急務と考えます。
    •  
    •  そこでこの項の最後に、県が実施する河川等のモニタリング調査について、過去の調査について、どういった地点で実施をしているのか、お答えください。
    •  
    •  また地下水汚染の可能性がある箇所について事前に調査・対策をしていくために今後、調査回数・調査地点を増やすべきと考えます。特に、築城基地周辺においても継続的に実施すべきと考えますが、知事の見解をお聞かせください。

 

答弁

問 県内消防本部のPFOA(ピーフォア)含有泡(あわ)消火薬剤の在庫及び廃棄状況について(知事答弁)

    • PFOAを含有する泡消火薬剤については、昨年2月時点で、合計930リットルが保有されていたが、現在は2消防本部で合計720リットルとなっている。
      •  なお、廃棄状況については、210リットルが専門業者を通じて、焼却処理のうえ適正に廃棄されたことを確認している。
    • また、PFOAを含まない泡消火薬剤への切替えについては、1消防本部は来年度までに、もう1つの消防本部は来年度からの3年間で順次切り替える予定と聞いているため、今後の進捗状況について、しっかり注視してまいる。
    • なお、国から非含有泡消火薬剤の優先使用に係る通知が発出されており、この2つの消防本部はこれを保有していることから、優先的に使用することとしている。

 
問 PFOS(ピーフォス)等含有泡消火薬剤の在庫と交換・処分に係る今後の働きかけについて(知事答弁)

    • 環境省の「令和6年度PFOS等含有泡消火薬剤全国在庫量調査」によると、県内には、PFOSを含有する泡消火薬剤の在庫が75,420リットル、PFOA(ピーフォア)を含有する泡消火薬剤の在庫が5,080リットルとなっている。
    • 本県に所在する空港のPFOS等含有泡消火薬剤の代替製品への交換・処分の計画は、福岡空港は今年12月に完了予定、北九州空港は完了済となっている。
    • また、自衛隊関連施設や石油コンビナート等へのPFOS等含有泡消火薬剤の代替製品への交換・処分の働きかけについては、環境省が関係省庁・関係団体と協力して取組を進めているところである。

 
問 PFOS等含有泡消火薬剤を使用しないことの県内保有者への協力依頼について(知事答弁)

    • PFOS等は、環境中で分解されにくく、人及び動植物に対する長期毒性を有することから、国においては、その環境中への排出をできる限り抑えていくことが重要であり、点検等の機会をとらえて、可能な限り、代替製品に切り替えることが必要であるとしている。
    • そのため、環境省は、消防庁など関係省庁や関係団体と協力し、保有事業者へパンフレットを配布するなどして、PFOS等を含有する泡消火薬剤の代替製品への切替えを呼びかけている。
    • PFOS等を含有する泡消火薬剤の使用は全面的に禁止されていないが、代替製品への切替えを進めていくため、県としてもホームページ等を活用し、協力を呼びかけてまいる。

 
問 芦屋基地専用水道からPFASが検出されたことに対する県の対応と今後の対応方針について(知事答弁)

    • 県では、芦屋基地及び九州防衛局から基地内の井戸で暫定目標値を超過したとの情報提供を受けて、芦屋町、岡垣町、遠賀町の3町、芦屋基地、九州防衛局、九州地方整備局に呼びかけ、周辺井戸所有者への注意喚起、水質モニタリング調査の実施等について協議を行った。
    • 井戸所有者への注意喚起については、芦屋町の協力の下、基地周辺で井戸を利用している16世帯に、念のため飲用を控え、安全な水道水を飲用するよう助言した。
    • また、水質モニタリング調査については、基地周辺の河川、水路及び海域の14地点で実施した。その結果、基地北側の水路1地点で暫定指針値の超過が確認されたところである。
    • 今月下旬には、基地周辺で行った地下水調査の結果も判明予定であり、県としては、この結果も踏まえ、住民の皆様の安全、安心を確保するため、基地周辺の町とも協議の上、しっかり対応してまいる。

 
問 県が実施する河川等のモニタリング調査について(知事答弁)

    • 県では、県内の河川、ダム等の公共用水域の状況を把握するため、令和2年度から、92か所ある環境基準点の全てにおいて、PFAS(ピーファス)のうちPFOS(ピーフォス)及びPFOA(ピーフォア)の水質モニタリング調査を計画的に実施している。
    • 今後、公共用水域に加え、地下水の状況を把握するため、PFOS等を取り扱っていた可能性のある施設や飲用井戸等の分布状況を考慮し、来年度から計画的に地下水調査を行うこととしており、環境審議会の了解を得ている。
    • また、築城基地周辺においては、基地周辺の地下水及び隣接する河川において暫定指針値への適合を確認しており、今後は河川の水質モニタリング調査を継続することにより、状況を把握してまいる。

質問

9.中学校部活動の地域移行について

    •  次に、中学校部活動、特に運動部の地域移行について、教育長にお聞きします。
    •  部活動については、生徒数の減少等によるやむを得ない廃部や、単独で試合に出られない学校が大幅に増えるなど、今後子どもたちの活動の選択肢がさらに少なくなることが危惧されます。また、これまで教員が自身の時間を削り、わずかな手当だけで支えてきましたが、全国的に教員不足・多忙化が深刻となる中で、部活動の仕組みは限界に近づいています。
    •  そのような中、神戸市では、市内の中学生約3万人、80校ある市立中学校のすべての部活動について、来年2026年8月末までに終了し、地域のスポーツクラブなどに移行することを決めました。
    •  一方で、福岡市や熊本市においては、モデル事業等を行った結果、部活動をなくし、地域に移行する「地域移行」は難しいとして、当面の間、部活動は残したまま、地域の人材を活用する「地域連携」を行う方向性を打ち出しています。
    •  現在、中学校部活動のあり方については、2023年度から2025年度までの3年間を「改革推進期間」とし、スポーツ庁、文化庁が段階的・計画的な地域移行を進めています。本県は、2023年度から実証事業を実施し、例えば、宗像市では、2026年度中には休日の部活動の地域移行を完了、2027年度中には平日の部活動の地域移行を完了する目標で地域移行を進めています。さらに昨年6月には、本県含む7県が主に休日の部活動を「地域クラブ」に移す改革のモデルとして、スポーツ庁の「重点地域」に選ばれ、全国的にも地域移行に積極的に取り組んでいる、と会派として期待しているところです。
    •  
    •  そこでまず、教育長にお聞きします。完了年度を示して地域移行をしている、休日のみ地域連携をめざす、など、県内各市町村の部活動改革に係る進捗状況について、段階ごとにお示しください。
    •  
    •  現場の市町村からは、自治体の規模等によっては、各市町村まかせではなかなか進まず、広域連携も必要ではないか、といったことや、指導者不足を懸念する声が聞かれています。
    •  
    •  そこで、2点目に、これまでの改革推進期間や重点地域に指定されて以降、県が実施した地域移行の取組みの成果と課題をお示しただき、それを踏まえ、今後、市町村の広域連携も含め、県としてどのように支援していくのか、教育長のお考えをお聞かせください。

 

答弁

問 県内各市町村の部活動改革に係る進捗状況について(教育長答弁)

    • 昨年12月時点では、県域58市町村のうち、34自治体が地域移行に取り組んでおり、そのうち、休日のみが22、平日も含めた取組が12である。
      •  また、34自治体のうち、完了年度を示しているのは16である。
      •  なお、その他の24自治体については、まずは、地域人材の活用や合同部活動などの、いわゆる地域連携に取り組むこととしている。

 
問 県が実施した地域移行の取組の成果と課題及び市町村への支援について(教育長答弁)

    • 県教育委員会では、これまで、地域移行の手順やモデルを示したガイドラインを作成するとともに、全市町村に対する実地調査を行ってきたところである。
      •  その成果として、各市町村における地域移行の必要性への理解が進み、多くの自治体において取組が推進されてきたと認識している。
    • また、地域移行の実証事業に参加した市町村数は、昨年度の3から、現時点で12と大幅に増加するなど、各市町村の取組が進んだ反面、特に小規模の市町村では、指導者の確保や運営体制の整備、財源の確保等に係る具体的課題も顕在化してきた。
    • こうした課題に対応するため、県として、今月、先導的な取組を紹介する全国規模のシンポジウムを初めて実施するとともに、近隣地域の担当者がそれぞれの取組について協議する地区セミナーを引き続き、開催する。
      •  これらの機会を通して、各市町村における課題の共有や広域連携等の先進事例の周知を行ってまいる。
      •  また、現在、重点地域の取組の一環として、希望する市町村に対し、大学や企業のアスリート人材を派遣する取組などが行われている。
    • 今後とも、県として、自治体の規模等にかかわらず、地域移行に関する取組が推進されるよう支援を行っていくとともに、国に対し、継続的な財政支援を要望してまいる。

質問

10.県民の安全確保について

    •  次に、県民の安全確保についてお聞きします。
    •  昨年12月14日、北九州市で中学生2人が被害に遭う痛ましい殺傷事件が起きました。被害に遭われた生徒、その保護者や関係する方々に心からのお悔やみを申し上げますとともに、いまだ、心の傷が癒されていない方々にお見舞い申し上げます。
    •  
    •  そこでまず警察本部長にお聞きします。
    •  県警察では今回の事件に対し、どのような対応を行ったのか、今後、県民の安全安心を確保するため、どう取り組んでいかれるのか、お聞かせください。
    •  
    •  続いて、SNSを通じたデマに関連してお聞きします。この事件に関して、犯人を名乗ったり、犯人の行動を知っているとする書込みがネット上で行われました。
    •  SNS上の書き込みは、兵庫県知事選挙や兵庫県議会をめぐっても大きな問題となったところです。
    •  北九州市における殺傷事件では、ネット上に犯人が潜んでいると書き込まれた近隣県においても、住民の安全確保のため警察をはじめ多くの関係者に多大な影響があったものと考えられます。本県県民に限らず、書き込まれた地域の住民は不安を煽られた中で、安全を確保しながらの生活となります。
    •  また、事件被害者への誹謗中傷、事件捜査をかく乱することのみを目的としたような愉快犯的な書込みも後を絶ちません。
    •  
    •  そこでこの項の最後に知事と教育長にお聞きします。
    •  ネット上のデマ情報や愉快犯的な書込みを未然に防いでいくため、ネットリテラシーの向上など、これまで以上の取組が急務と考えますが、知事の考えをお聞かせ頂き、また学校において、情報モラル教育に更に取り組んでいくべきと考えますが、教育長の見解をお聞かせください。

 

答弁

問 県民の安全安心を確保するための取組等について(警察本部長答弁)

    • まずは、事件により亡くなられた被害者のご冥福と、負傷された被害者の一日も早いご回復を心からお祈り申し上げる。
    • 県警察では、事件発生直後から、被疑者を早期に検挙すべく、最大限の捜査員を投入し、鋭意捜査を推進した結果、発生から6日目に男子中学生に対する殺人未遂で被疑者を通常逮捕し、さらに、1月9日、女子中学生に対する殺人で再逮捕した。
    • 本件に関しては、事件捜査と併せて、地域住民の方々の不安感を払拭するため、
      • 事件の発生した小倉南区を中心に、北九州地区全域において朝夕の登下校時間帯及び夕方から夜間の塾帰りの時間帯を中心としたパトカー・白バイなどによる警戒
      • ヘリコプターによる上空からの警戒
      • 忘年会、クリスマスイベントなどで人が集まるJR小倉駅周辺の警戒
      • など、学校や自治体と連携し、徹底した警戒活動を行ったところである。
    • また、自治体のホームページの問い合わせフォームから送信された殺害予告など、本件に便乗した悪質性の高い書き込みについては、個別に内容を確認するなど、所要の捜査を進めているところである。
    • 県警察としては、犯罪の未然防止や安全安心なまちづくりを一層推進するため、地域社会や関係機関・団体等と連携して、防犯カメラの設置促進などの防犯対策を強化するとともに、万一、同種の事件が発生した場合は、今回と同様に徹底した捜査による被疑者の早期検挙、県民の不安感を払拭するための警戒活動を、県警察の総力を挙げて推進してまいる。

 
問 ネット上のデマ情報や愉快犯的な書込みを防いでいくための取組について(知事答弁)

    • 犯罪に便乗したインターネット上での虚偽情報の発信は、県民の皆様の不安を煽り、安全安心な生活を脅かす行為である。また、被害者への誹謗中傷は、被害に遭われた方々の心をさらに深く傷つける人権侵害であり、これらは、決して許されるものではない。
    • この様な行為を防いでいくためには、インターネットを利用する一人ひとりが、情報を適切に判断し、運用する能力であるネットリテラシーを身につけておくことが重要であると考える。
    • このため県では、ホームページにおいて、虚偽の情報や、他人の名誉を傷つける情報、プライバシーを侵害する情報を発信しないこと、発信する内容によっては、名誉棄損などの法的責任を負うこともあること等、インターネット利用のマナーとルールについて、県民の皆様に周知を図っているところである。
    • 特に、若者のネットリテラシーを高めるため、高校生がインターネットの利用についてルールやマナーを考えるフォーラムを開催している。また、学校、PTA、通信事業者、NPO、警察などで構成される「福岡県青少年の安心・安全なインターネット利用推進連絡会議」において課題を共有し、各団体の取組の充実に努めているところである。
    • さらに、今後、県民の皆様を対象とした防犯講座や、県のDXの取組を紹介するセミナー等の機会を捉え、被害者にも加害者にもならないために必要なネットリテラシーの周知に、しっかり取り組んでまいる。

 
問 情報モラル教育の推進について(教育長答弁)

    • 現在、中学校の技術・家庭科や、高校の情報科の授業において、インターネット上の悪質な書き込みや誹謗中傷が犯罪となり得ることなどを学習するとともに、道徳科やその他教科においても情報モラル教育を横断的に実施している。
      •  また、各学校では、保護者と学ぶ規範意識育成学習会を実施し、その学習テーマの中でもインターネットの適正利用を取り扱うこととしている。
    • さらに、情報機器の適切な取り扱いをまとめたワークブックを県独自に作成するとともに、情報モラルを高める指導法についての実践的な研究を進めているところである。
      •  県教育委員会としては、SNSが急速に普及する中、児童生徒がネット上のデマ情報により加害者になったり、被害者になったりすることがないよう、今後とも、情報社会の一員としての人権感覚を養うとともに、正しく情報を見極める力を育成してまいる。

質問

11.サイクルツーリズムに関する県の施策について

    •  次に、サイクルツーリズムに関する県の施策について、知事に伺います。
    •  ここ数年、観光施策の一環としてサイクルツーリズムが盛んとなっています。
    •  昨年10月、福岡・大分・熊本・を舞台に国際自転車ロードレース「ツール・ド・九州」が開催され、福岡大会2日目の会場となった私の地元の遠賀郡でも大いに盛り上がりを見せ、地域の活性化に寄与するなど、現在もサイクルレジャーの人気は高まっています。
    •  そこでまず、知事に伺います。
    •  
    •  本県の観光におけるサイクルツーリズムの重要性についての知事の認識と、その主な施策、実績、また今後どのようにサイクルツーリズムを推進していくのか、お示しください。
    •  
    •  本県は観光施策として、県内に10の広域サイクリングルートを指定し、自転車専用道路等が整備されています。特に、宗像・芦屋ルートは、福岡市を本拠地とする自転車ロードレースのプロチームであるVC福岡の練習にも活用されている本格的なサイクリングロードでもあります。
    •  また、岡垣エリアでは、レンタサイクルの利用が可能で、サイクリストが休憩スペースとして利用できる県有施設の「リンリンクラブ」や、サイクルスタンドの設置、自転車工具の貸し出しなどの受け入れ環境の整備が進められ、岡垣エリアを拠点としてサイクリングを楽しまれる方々が多く訪れています。
    •  一方で、広域サイクリングルート内で、レンタサイクルを利用した場合、原則、借りた場所に戻らなければならないため、気軽に広域な移動ができないという課題が生じているとのことです。
    •  この対応として、レンタサイクルの貸し出しを行っている岡垣町と芦屋町の観光協会同士で、片道のみの利用を可能とする協定を締結し、利便性の向上に努める運営を行っており、県内10の広域サイクリングルートにおいて、レンタサイクル拠点の整備を進めていくことが重要と考えます。
    •  
    •  そこで2点目に、主要なサイクルステーション間で乗り捨てを可能とする連携協定の締結や、サイクルポートの設置、10の広域サイクリングルート内におけるレンタサイクル拠点の整備を推進するなど、レンタサイクルを利用する方の利便性向上の取組をどのように進めていくのか、お聞かせください。
    •  
    •  県道301号線でもある自転車専用道では、隣接する砂浜から砂が押し寄せ堆積したり、除草等の管理が追い付かずに、草木が道にはみ出して、走行するには危険な状況にある場所があると、先ほど述べたVC福岡の選手や一般のサイクリストの方から指摘を受けました。
    •  県が管理する自転車専用道の維持管理は、県土整備事務所の管轄となります。しかし、予算や人員が限られるなかで、サイクリングロードの清掃や周辺の除草について臨機応変に対応できない場合もあると現場からはお聞きしています。
    •  
    •  そこで最後に、自転車専用道は本県の貴重な観光財産と捉え、その維持管理を強化していくべきと考えますが、今後の取組をお聞かせください。

 

答弁

問 サイクルツーリズムへの認識とその推進について(知事答弁)

    • サイクルツーリズムには、景色を五感で感じながら自分のペースで移動できるという特色があり、定番の観光地はもちろん、各地域の自然や街並み、食事、温泉などを気軽に楽しむことができる魅力がある。
      •  加えて、台湾や欧州、オーストラリアなど海外でも人気が高く、国内外のサイクリストや観光客の県内誘客を促進する体験型観光として重要であると認識している。
    • このサイクルツーリズムを県内誘客に活かすため、県では、市町村や観光協会等と連携し、遠賀川や玄界灘に面し、自転車専用道を中心とした初心者でも楽しめる「直方・宗像・志賀島ルート」や、海辺から英彦山まで駆け上がる「豊前・東峰ルート」など、地域の多様な特色を楽しむことができる10の「広域サイクリングルート」を設定した。
    • また、広域サイクリングルートや周辺の観光スポットの魅力を広くPRするため、県の観光情報サイトやSNSのほか、自転車専門のインフルエンサーを活用した発信、サイクリングイベントやスポーツ自転車展示会におけるブース出展、自転車専門誌での特集記事掲載などに取り組んでいる。
    • さらに、安全で快適なサイクリングを楽しむことができる環境を整備するため、サイクリスト向けの路面標示や、サイクリストが休憩できる「サイクルステーション」、客室内に自転車保管場所を備えた「サイクリストに優しい宿」などの整備を進めるとともに、サイクリングガイドの育成にも取り組んでいる。
      •  加えて、昨年10月には、旅行会社等のサイクリングツアー造成をワンストップで支援するため、全国で初めて「FUKUOKAサイクリングツアーコンシェルジュ」を設置し、好評を博しているところである。
    • 今後も、こうした取組を進め、市町村や観光協会、民間事業者と連携してサイクルツーリズムを推進し、国内外からの誘客を図ってまいる。

 
問 レンタサイクルの利便性の向上について(知事答弁)

    • 県では、サイクルツーリズムを根付かせるため、市町村や観光協会等とともに「福岡県サイクルツーリズム推進協議会」を設立し、広域サイクリングルートの設定や受入環境の充実に向けた検討などを行ってまいった。
      •  この推進協議会の活動を通じ、岡垣町と芦屋町では、議員からご紹介があったように、町域を超えた自転車の「乗り捨てサービス」が開始され、利用者から好評を博しているところである。
    • こうした先進事例を県内各地域に広げるため、県では、令和4年度から、レンタサイクル事業を開始する際の設備機器導入や、自転車の「乗り捨てサービス」導入などに係る経費の助成事業を開始した。
    • この県の支援制度を活用し、外国人観光客のニーズに応えるため、様々なサイズのロードバイクを導入したケースや、地域観光協会やDMOが連携し、それぞれのサイクルポートで乗り捨てができる事業を開始したケースなども出てきている。
    • 今後も、「福岡県サイクルツーリズム推進協議会」を通じて、先程の先進事例や受入環境整備に向けた課題の共有を図るとともに、県の助成制度の活用を促し、さらなる利用者の利便性向上に繋げてまいる。

 
問 自転車専用道路の維持管理について(知事答弁)

    • 県管理の道路については、定期的な巡視を行い、必要に応じて清掃や除草を行うなど、適切な維持管理に努めているが、予算や人員が限られていることから、道路の利用者や沿道の方々のご協力も得ながら実施しているところである。
    • 具体的には、「さわやか道路美化促進事業」において、個人や町内会・企業等の団体の皆様に、道路の清掃や除草などをお願いし、県がその活動を支援している。
      •  しかしながら、現在、自転車専用道路を対象として活動していただいている団体はない。
    • このため、県としては、サイクルステーションなどの団体に参加を促すとともに、SNSや様々なサイクルイベントを活用してサイクリストの皆様に清掃活動への協力を働きかけてまいる。
    • また、サイクルステーションと連携して、サイクリストの皆様に自転車専用道路へのニーズを聞き取り、より安全で快適な自転車走行環境となるよう努めてまいる。
    • 特に、県道301号の自転車専用道路の一部は、海岸に隣接し、大量の砂が頻繁に堆積するといった、厳しい環境下にあることから、更なる防砂垣の設置など、維持管理の頻度を少なくできるような対策を併せて検討しているところである。