予算特別委員会「世界保護司会議を受けての本県の再犯防止の取組みについて」

2021年3月16日
 

 民主県政クラブ県議団の原中誠志です。発言通告に従い、「世界保護司会議を受けての本県の再犯防止の取り組みについて」質問します。
 
 私は現在、保護司をしております。まだまだ駆け出しの保護司ですが、犯罪や非行を行った方々の更生、再犯防止などに関わっております。
 
 保護司の仕事というのは、地域社会の中でボランティアとして、犯罪を犯した人や非行に走った人たちの立ち直りの援助や、地域住民からの犯罪や非行の予防に関する相談に応じ、必要な助言・指導を行うなど、更生保護行政の重要な役割を担っています。
 
 保護司は、『保護司法』に基づき、法務大臣の委嘱を受けた非常勤の国家公務員ですが、本質的には民間のボランティアです。保護観察官と協力して、活動しています。
 
 更生保護を実施する国の機関は法務省ですが、その地方機関として、「地方更生保護委員会」があり、これは高等裁判所の管轄区域ごとに全国8カ所に置かれ、少年院や刑務所に収容されている人の仮釈放に関する決定を行う機関です。
 
 そして、「保護観察所」、これは各都道府県に置かれ、保護司をはじめとする地域の人々の協力を得て、保護観察や犯罪予防活動などを実施する機関ですが、福岡では地元・福岡市中央区六本松に「福岡保護観察所」があり、私もそこを拠点に活動しています。
 
 保護司は、罪を憎んで人を憎まず。被害を受けた方々のことを思えば、しっかりと償うということが求められています。
 
 一方、再犯に至らせず、社会に復帰する道へと、周囲の様々な関係者が寄り添い、導いていくことも、県民が安心して地域生活を送る上で、大変重要なことであり、保護司活動の中で、そのことを強く感じている次第です。
 
 さて、本年3月7日~12日、「第14回国連犯罪防止刑事司法会議」が京都で開催されました。いわゆる「京都コングレス」です。
 
 この「国連犯罪防止刑事司法会議(コングレス)」は、5年に一度開催される犯罪防止・刑事司法分野における国連最大の国際会議で、事務局は、国連薬物・犯罪事務所(United Nations Office on Drugs and Crime(UNODC))が務めています。
 
 コングレスでは、犯罪防止・刑事司法分野の専門家が、世界の犯罪防止・刑事司法分野の諸課題について議論しつつ、その知見を共有し、コミュニケーションを図ることで,様々な分野における国際協力を促進し,より安全な世界を目指して協働することを目的としています。
 
 コングレスでは,犯罪防止・刑事司法分野において国際社会が直面している諸問題や解決すべき喫緊の課題に対して,世界各国が協力して取り組むべき方策を取りまとめた「政治宣言」を参加国の全会一致により採択されます。
 
 今回のコングレスに合わせて、初めて開催された「世界保護司会議」において、保護司活動の重要性と更なる活性化についての提言がなされています。
 
【質問1】
 そこでお聞きします。
 会議では、どういう提案がなされたのか、簡潔にお答え下さい。
 
(答)

  1.  日本の保護司制度を世界に普及させること目的とした、「世界保護司会議」が、今月7日、京都市で初めて開催されました。
  2.  この会議において、わが国で始まった地域ボランティアである保護司の制度が、犯罪者の社会復帰、ひいては安全・安心な社会の構築のために有効な制度であり、「誰一人取り残さない」というSDGsの目標達成に向けて、保護司は極めて重要な役割を果たしていることが確認されました。
  3.  そのうえで、再犯防止における保護司活動の国際的ネットワークを構築することを目指す「京都保護司宣言」が採択されました。
  4.  この宣言には、地域ボランティアの制度の発展に向けて国連がとるべき具体的なアクションとして、


 ① 保護司の国際的なネットワークの構築
 ② 技術的な支援の加盟国への提供
 ③ モデル戦略の策定
 ④「国際保護司デー」の設立
 などが盛り込まれ、体系的に実行していくことが求められたと聞いております。
 
 今後、この提言を受けて、国内法の整備、それに基づく具体的な事業が進められていくことになると思います。
 
 国では、2016年12月に『再犯の防止等の推進に関する法律』、いわゆる『再犯防止推進法』を成立させました。
 
 我が国においては、検挙人員に占める再犯者の割合である「再犯者率」が上昇しており、安全で安心して暮らせる社会を構築する上で、犯罪や非行の繰り返しを防ぐ「再犯防止」が大きな課題となっています。
 
 この法律は、このような我が国の現状を踏まえ、国民の理解と協力を得つつ、犯罪をした者等の円滑な社会復帰を促進すること等による再犯の防止に努め、犯罪対策において重要であることに鑑み、再犯の防止等に関する施策に関し、国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、再犯の防止等に関する施策の基本となる事項を定め、再犯の防止等に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、国民が犯罪による被害を受けることを防止し、安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与することを目的とするとしています。
 
 法務省や警察庁、厚生労働省など省庁横断で再犯防止に力を入れていくとしており、地方にも取り組みを求めています。
 
 本県でも、2019年3月に「再犯防止推進計画」を定め、少年非行や薬物犯罪、性犯罪、飲酒運転など、犯罪や非行が繰り返されないよう、様々な分野で再犯防止に取り組んでいます。
 
 そこで、再犯の数や率はどれくらいか。その傾向も含めて、刑法犯や再犯の状況について、あらかじめ「本県における刑法犯や再犯の状況について」資料要求していますので、委員長のお取り計らいをお願い致します。

【質問2】
 それでは、資料に沿って、簡潔にご説明ください。

(答)
1 お配りした資料は、警察庁「令和2年度 犯罪白書」をもとに作成しました、刑法犯と再犯の状況に関するデータです。
 
2 1ページのグラフをご覧ください。
 刑法犯により検挙された者と、このうち再犯者の数、そして再犯者率の推移を表したものです。
 青色の棒グラフが示す検挙者数は、平成16年の38万件余をピークに年々減少し、令和元年では約半分の19万件余となっています。
 
 赤色の棒グラフが示す再犯者数は微減傾向となっています。
 全体の検挙者数に占める再犯者数の割合は、増加を続けており、平成15年度の35.6%に対し、令和元年では48.8%で13.2ポイント増となっています。
 
3 次に2ページの表をご覧ください。
 令和元年度、刑務所等から出所後、どれくらいの期間で再犯し、再び入所したかについての統計です。
 1年未満で再犯に至った者は36.8%、2年未満では、実に約6割を占めています。
 
4 最後に3ページのグラフをご覧ください。
 刑法犯検挙者数の年齢別の推移を表したものです。20歳未満の比率は、平成15年度に比べて約4分の1程度に減少しているのに対し、65歳以上の高齢者は、平成15年の7.8%に対し、令和元年は22%と高齢者の比率が増加していることがわかります。

 今の説明を聞いて、改めて再犯防止が必要であると、実感する次第です。
 再犯防止を推進する上では、国が主体となるものの、保護司や協力雇用主など、民間の支援者の果たす役割が大きいと考えます。
 
【質問3】
 そこで、県として、こうした民間の支援者とどんな連携を図っているのか、お答えください。
 
(答)
1 県では、県内の弁護士会、保護司会連合会、更生保護協会、協力雇用主会、社会福祉士会、宅地建物取引業協会等、最前線で支援に携わる14団体の代表者による有識者会議を設置し、県の施策に対する助言、指導をいただいているところです。
 
2 また、各団体の会員には、立ち直りのための相談、住居に関する情報の提供、就職や福祉サービス利用調整など、様々な面で御協力いただいています。
 
【質問4】
 いまお答え頂きましたが、再犯防止の取り組みについては幅広い民間の支援者の方々にご協力頂いているわけですが、私も大変重要視している協力雇用主についてですが、県内の協力雇用主の数はどれくらいになるのか、お示し下さい。
 
(答)
1 法務省からの情報提供によると、県内の協力雇用主の数は平成29年4月1日では795、令和2年10月1日では
1,071となっており、3年半の間に276の増となっています。
 
 保護司活動の中で、先輩保護司の方や、そして研修の中でもたびたび話しが出され、私も重要と感じていることがあります。それは、刑務所や少年院などを出て、社会に出ていくときに問題となる「住まい」と「仕事」の確保についてです。
 
 刑務所や少年院などを出たあと、家族や親元に戻れるのが一番ですが、それもなかなか難しいというのが現実です。
 
 親、兄弟、親族の理解、そして、周辺住民の理解がないと、地元に戻りづらい、戻ったとしてもそこに住み続けられないという悲哀を感じ、家を出ていかざるを得ない状況となり、もとの悪友に誘われたり、再び薬物に手を出すという状況になりかねません。
 
 さらに、就職についても、企業側、雇用主の理解が不可欠となりますが、まだまだ協力雇用主の数は十分だとは言えません。
 
 記憶に新しいところですが、昨年8月28日、福岡市中央区の商業施設「マークイズももち」で起きた15歳の少年による殺人事件は、県民はもとより、全国に大きな衝撃を与えました。
 
 この少年は、少年院を出て、保護観察中、更生保護施設に入所したものの、1日で施設を飛び出し、この事件に及んだという事です。
 
 この事件の問題点は、そもそも15歳が、少年院を出た後に施設に入るのは「極めて異例」ということです。家族などの引き受け手がなかったという事が背景にありますが、少年をどう支援し、再非行を防ぐか。事件は少年犯罪の現状と矯正、更生、「受け皿」の充実など、重い課題を投げ掛けています。

【質問5】
 そこで、お聞きします。
 本県としては、刑務所出所者に対する支援を10年ほど続けてきていると思いますが、どのような取り組みなのか、ご説明ください。

(答)
1 刑務所等の矯正施設を出所され、帰住先がないような人については、更生保護施設をはじめ、様々な機関や民間協力者が連携し、新たな住居や仕事探し等の支援を行っていると承知しています。
 
2 その中で、県では平成22年度に福岡県地域生活定着支援センターを設置し、高齢又は障がいにより、矯正施設から退所した後、自立した生活を営むことが困難な人に対して、保護観察所の依頼に基づき、退所後地域で安定した生活を送れるよう支援を実施しています。
 
3 具体的には、①矯正施設入所中から更生保護施設への一時入所や社会福祉施設への入所、居宅となるアパート等への入居の調整など帰住先の確保に向けた調整を行うとともに、福祉サービスに係る申請支援を行うコーディネート業務、②福祉施設等へ入所した後も継続的に支援するフォローアップ業務、③地域に暮らす矯正施設退所者に対して福祉サービス等の利用等に関する相談支援業務を実施しています。
 
【質問6】
 では、この事業、すなわち出口支援でどんな成果があったのか、お答えください。
 
(答)
1 平成22年度から令和3年1月末までの累計で674名を支援しており、地域生活が安定したなどの理由により支援終了した人を除き、令和3年1月末現在で149名の支援を継続しています。
 
2 この149名について見ると、居宅で生活している人が26名、障がい者グループホームや養護老人ホームなどの福祉施設に入所している人が26名、更生保護施設に入所している人が53名などとなっています。
 
3 なお、令和3年1月末現在、コーディネート中の人などを除く627名のうち、再犯に至った人は57名で、その割合は9.1%となっており、矯正施設退所後の地域生活への定着を支援することは、再犯防止に資するものと考えています。
 
【質問7】
 再犯防止を考えたとき、出所者の支援も大事ですが、できるだけ早い段階で、支援につなげることで、更に効果を挙げられるはずだと考えます。
 そこで、こうした支援について、本県として取り組まれていることがあるのか、お聞きします。
 
(答)
1 令和元年9月から、国の「地域再犯防止推進モデル事業」を活用し、「福岡県立ち直りサポートセンター」を設置し、運営を民間団体に委託しています。
 
2 同センターでは、起訴猶予や執行猶予となった人のうち、福祉的支援が必要な人を対象として、住居や就職先の確保など、地域生活を円滑に送るための支援を実施しているところです。
 
3 支援対象は、高齢者や障がいのある人、アルコールなどの依存症、薬物事犯の初犯者、性犯罪加害者などとしています。
 支援に当たっては、検察庁や弁護士会をはじめ、県の薬物再乱用対策のコーディネーターや、性暴力加害者相談支援窓口などとも連携を図っています。

【質問8】
 令和元年9月からという事で、取り組みを始めて、まだあまり月日がたっておらず、現時点で、成果とまでは言えないかもしれませんが、経過としてどのような状況にあるのか、お答えください。
 
(答)
1 「福岡県立ち直りサポートセンター」の支援実績ですが、約1年半の間に31名の支援を行い、このうち、再犯に至った人は2名で、その割合は6.4%となっています。
 
2 全国の再犯率や地域生活定着支援センターの実績に照らし、この事業は再犯防止に効果を挙げているものと考えています。
 
3 また、年度内に、モデル事業で得た支援事例をもとに、対応方法や支援機関等に関する情報をマニュアルとして取りまとめ、民間の協力企業・団体、市町村等に提供し、地域における支援の取組みに役立ててまいります。
 
【質問9】
 いまやり取りをさせた頂きましたが、県としての、いわゆる「入口支援」と「出口支援」についてのの取り組みについて説明を聞き、それぞれ一定の成果があったと理解します。
 であるならば、こうした取組みを一層進め、また、保護司などの民間支援者との連携も強化して、再犯防止につなげていくべきと考えます。
 今後に向けて、「再犯防止推進計画」を受け持つ福祉総務課長の考えをお聞きします。
 
(答)
1 入口支援を担う「立ち直りサポートセンター」については、令和3年度からスタッフを増員し、年間50名の支援を目指すとともに、出口支援を担う「地域生活定着支援センター」と一体的に運営することで、支援体制の強化を図ります。
 
2 また、センターは現在、福岡市東区の賃貸マンションの一室で業務を行っていますが、本年4月からは、福岡市中央区赤坂にある県の「福岡西総合庁舎」に移転することとし、必要な手続きを進めているところです。
 
3 このことにより、同じ中央区内にある検察庁、保護観察所、弁護士会、保護司会連合会、協力雇用主会などとの連携を密に行うことができるようになり、支援も充実すると考えます。
 
4 このように様々な関係機関と協力して支援体制を強化することで、より一層、再犯防止を推進してまいります。
 
 これまでお答えいただきましたが、再犯防止については、公的機関、民間の協力者、県民の理解、この3者の連携と取り組みが必要です。
 県として、こうした取り組みの先頭に立って再犯防止の取り組みを推進して頂くよう強く要望し、私の質問を終わります。