2023年3月8日「予算特別委員会」
総務部質問
「人口減少社会における本県の対応について」

 我が国の人口問題を語るとき、戦後のベビーブーム世代、いわゆる「団塊の世代」が2015年には65歳以上に到達し、2025年には75歳以上の後期高齢者に到達する、いわゆる「人口の2025年問題」です。

 国連の定義では、高齢化率(総人口に占める65歳以上の割合)が7 %を超えると「高齢化社会」、14%を超えると「高齢社会」、21 %を超えると「超高齡社会」とされています。日本はすでに4人に1人が65歳以上の高齢者という「超高齢社会」に突入していますが、「高齢者の高齢化」は進行し続けています。 
 
 「国立社会保障・人口問題研究所」(「社人研」)調査によると、2018年には75歳以上の人口が65歳〜74歳人口を上回っていることが明らかにされています。

 2015年の国勢調査で、我が国の人口減少が実際に確認されました。総人口が約1億2,709万5,000人となり、5年前の前回調査に比べて約96万3,000人減っています。
 
 1920年の「第1回国勢調査」から100年にして、日本の人口は初めて減少となりました。そしてもう一つ、人口に関する問題として、2016年の年間出生数が初めて100万人の大台を割り込み、97万6,978人にとどまりました。
 
 このとき、すでに「近年中に、出生数は80万人を割り込む」と指摘されていましたが、実際、2022年の出生数は79万9,728人となり、初めて80万人を割り込みました。
 
 2024年の日本の人口は、2015年国勢調査時より393万人減ると推計されています。その一方、75歳以上は約490万人増え、約2,121万人を数えるとされています。65〜74歳を含めると、高齢者全体では約3,670万入に達する計算であり、国民の約3割が65歳以上、6人に1人が75歳以上となる計算です。

 その後も75歳以上は増え続け、今から20年後の2042年には高齢者人口はピークを迎えます。そして、2043年には、総人口の7人に1人が80歳以上となり、毎年の死亡者数は150万人を超え、出生数の2倍という「超・高齢者大国」になります。
 
 我が国の総人口は、長期の人口減少過程に入っています。前回国勢調査の2015年時点において1億2,700万人を数えた日本の総人口は、2029年には人口1億2,000万人を下回り、その後も減少を続け、2053年には1億人を割って9,924万人となり、2060年には9,284万人になると推計されています。
 
 50年、100年の単位で将来人口推計を見ていくと、100年も経たぬうちに日本の人口は5,000万人ほどに減ることになります。こんなに急に人口が減るのは世界史において類似はありません。
 
 戦後一貫して少子化傾向にありながら、2015年まで人口が増えていたのは平均寿命の延びが少子化を覆い隠したためですが、いよいよ高齢者が大きく減り始め、地方によってはこうしたマジックが通用しない時代に入ってきたことになります。
 
 高齢者数が大きく減った地域では、高齢者の消費をあてにしていた地域経済が成り立たなくなり、仕事を無くした若者が仕事を求めて都会に流出し、人口減少スピードが加速する悪循環になります。
 
 とりわけ「次の世代」を出産する20〜39歳の女性の都会、都市部への流出は、人口が減り始めた地方にとっては痛手となります。
 
 民間の研究組織「日本創成会議」が2014年、『消滅可能性都市』を発表しました。「日本創成会議」が言う地方消滅とは、「次の世代」を出産する20〜39歳の女性たちが現在の半数以下になった自治体は、残った女性の合計特殊出生率が改善しても人口が減り続け、「消滅」する運命にあるということです。
 
 同会議の推計では、「消滅」の可能性がある自治体は全国に896 に上り、全国?1,718市町村のうち、52%にあたります。そして、2040年時点で人口が1万人を切る523自治体は「消滅」の可能性が極めて大きいことになります。

 「日本創成会議」が発表した地方消滅のインパクトがあまりにも大きかったがゆえに、人口減少で消えゆくのは地方の自治体であり、東京圏などの大都市部は関係ないといったイメージが常識として独り歩きしている感があります。
 
 ところが、全国をもう少し詳しく見ていくと決してそうではないことが分かります。
 
 「国立社会保障・人口問題研究所」が2015年の国勢調査に基づいて予測した「日本の地域別将来推計人口」(2018年)も、2045年の日本の厳しい未来図を改めて描き出しています。
 
 2030年以降は、東京を含む全ての都道府県で人口が減り、2045年には人口が40%以上減る自治体が全体の40.9%にも及ぶと指摘しています。
 
 こうした数字を見る限り、「大都市部への人口集中と地方の過疎化が加速する」との印象を受けますが、社人研は大都市部の自治体における「過疎」も予測しています。
 
 例えば、福岡県においては、政令指定都市のうち、北九州市は17.9%も減り、増加を続けている福岡市も2035年をピークに減少に転じる推測です。

 2040年ごろにかけて、人口が7割減ったり、高齢化率が8割に達したりする地域も出てきます。自治体職員が4分の3になる自治体もあります。そのような事態を想定して、市区町村の枠組みを超えて住民の生活地域を集約するような政策のあり方を積極的に検討すべきです。

Q1:そこで質問に入ります。
 まず、本県の人口の将来推計について、執行部として10年後、20年後、30年後といった中長期的な将来推計を立てているのか、お聞きします。
 その上で、将来推計を立てているとすれば、どのような将来推計なのか、お答えください。
 

(調査統計課長 答弁)
 昨年3月に策定した「福岡県総合計画」の「人口ビジョン」におきまして、2060年までの本県人口を推計しております。
 人口ビジョンでは、まず、東京圏への転出超過といったこれまでの状況が継続した場合の将来人口を、国立社会保障・人口問題研究所の推計方法に準拠し推計しております。
 これによりますと、2035年に484万人、2045年に455万人、2055年に425万人と、後年になるほど人口減少が加速していくものと見込んでおります。
 また、地方創生の取組みを進めることで、県民の希望する出生率が実現し、東京圏への転出超過が是正されるといった、これまでの状況が改善するケースでは、2055年の人口を453万人と、2020年の国勢調査の結果から約60万人の減少を見込んでいるところでございます。     

 
Q2:次に
 「国立社会保障・人口問題研究所」が2018年に出した「日本の地域別将来推計人口」によれば、2015年の人口を100とした場合、30年後の2045年に人口がどれくらい減るかを示したところ、人口が半数以下になってしまう地域が全国に発生し、人口5,000人未満の自治体が増加すると指摘しています。

 そこでお聞きします。この推計をもとに本県を当てはめると、本県の状況はどのようになると推測できるか、お答え下さい。
 

(調査統計課長 答弁)
 本県における人口が5千人未満の市町村は、2020年の国勢調査の結果においては、東峰村及び赤村の2村ですが、国立社会保障・人口問題研究所の推計によりますと、2045年には、全市町村数の1割を超える7町村と見込まれています。

 
 先ほども述べましたが、「国立社会保障・人口問題研究所」の推計では、2024年の日本の人口は、2015年国勢調査時より393万人減ると推計され、65歳以上の高齢者が全体で約3,670万入に達し、国民の約3割が65歳以上、6人に1人が75歳以上となる「超・高齢者大国」となります。

Q3:そこで質問です。
 いまから20年後の、本県の人口ピラミッドは大きく変化しているだろうが、年齢区分ごとの人口構成はどのようになると推測しているのか、お答えください。

(調査統計課長 答弁)
 国立社会保障・人口問題研究所に準拠した推計によりますと、人口構成は、  2020年と2045年の比較で、15歳未満の年少人口が13%から11.9%に減少、15歳以上65歳未満の生産年齢人口も、59.1%から   53%に減少する一方で、65歳以上の老年人口は、27.9%から35.2%に増加すると見込んでおります。

 
 服部知事は、今議会に「2023年度(令和5年度)予算」を提案しています。その予算案で3つの柱を示されています。
 
 一つは「1,000億円の人づくり」、二つは「県内GDP20兆円への挑戦」、三つ目は「安全・安心で活力ある社会づくり」です。なお、3番目の柱のうち、出産・子育て施策の充実強化のため、新たに「出産・子育て安心基金」を設置し、機動的な出産・子育て施策を講じるとしています。
 
Q4:そこで質問です。
 これら新年度予算、そして3つの柱については、どのような社会状況のもとで達成する、実現することができると考えているのか、その前提としているものは何か、お答えください。

(総合政策課長 答弁)
 調査統計課長の答弁にありましたように、総合計画では、将来人口について、これまでの状況が続くことを前提にした、さきほど来触れてます、社人研に準拠した推計を行うとともに、県民の希望する出生率が実現し、東京圏への転出超過が是正されるような、これまでの状況が改善されるケースこちらも推計をいたしております。
 県といたしましては、地方創生の取組を進め、人口減少を最小限に食い止めていきたいと考えております。
 そして、人口減少社会を前提にしながらも、世界を視野に未来を見据えて成長・発展し、誰もが住み慣れたところで働き、長く元気に暮らし、子どもを安心して産み育てることができる社会を実現するため、各分野における施策の方向性を示しております。
 こうした中、昨年は、コロナの爆発的感染拡大、ロシアのウクライナ軍事侵略、急激な円安など、予測困難な事象が発生しております。県といたしましては、今後も起こり得る様々な情勢変化に、しっかりと対応し、コロナにより大きく落ち込んだ経済を立て直し、官民で経済を牽引するため、来年度予算では、3つの柱を立て、人や経済、社会にしっかりとした投資を行うこととしたものでございます。


 現在の福岡県の人口が継続し、基礎自治体となる市町村が今の姿で維持でき、地域で行政サービスを提供する行政職員や公共サービスに携わる人たちが存続し続けるという前提では、この先5年くらいまでは可能としても、10年後には、20年後には確実に立ち行かなくなることが、人口推計をもとにしても明らかです。

Q5:そこで、最後に牛島部長にお聞きします。
 20年後の本県の姿を想定し、今のうちから人口減少社会、縮む自治体を前提とした施策を講じるべきだと思いますが、部長の見解をお聞きします。
 

(企画・地域振興部長 答弁)
 委員から御指摘をいただいていますように、これから県内の多くの地域で人口減少が進み、生産年齢人口が減っていくということが見込まれておりまして、県内の地域間の格差の拡大が懸念されておるところでございます。
 また、人口減少のみならず、高齢化の進行や、自然災害の激甚化・頻発化など、一方ではグローバル化が更に進展していくということで、私たちを取り巻く状況というのは大きく変化をしているところでございます。
 このような中にありましても、県内のそれぞれの地域が、その特性を踏まえまして、地域の基幹産業であります農林水産業や中小企業、観光産業の振興、また、これらを支える人材の育成・確保、公共交通の維持・確保などによりまして、持続可能なまちづくり、地域づくりを推進していかなければならないと、いうふうに考えております。
 その上で、アジアに近い地理的条件ですとか優れた広域交通ネットワーク、多様な産業の集積や優秀な人材など、本県の持つ強みを生かした政策を積極的に展開して、県全体の発展につなげてまいりたいというふうに考えております。
 県内どの地域でも、誰もが、住み慣れたところで働く、長く元気に暮らす、子どもを安心して産み育てることができる地域社会づくり、これに最大限の努力を続けてまいります。