2023年3月9日「予算特別委員会」
保健医療介護部質問
「人口減少社会における本県の高齢化対策について」

 民主県政クラブ県議団の原中誠志です。発言通告に従い、「人口減少社会における本県の高齢化対策について」質問します。

 昨日の総務費の質疑応答において、我が会派の冨永委員が、我が国の人口減少社会到来について質問しました。その中で、「2025年問題」について指摘したところです。
 
 しかしながら、日本社会はこの「2025年問題」よりもさらに深刻な状況に置かれることになります。
 
 「国立社会保障・人口問題研究所」、いわゆる「社人研」の推計によれば、2042年には、高齢者の数が3,935万2,000人でピークを迎える年です。2016年の高齢者人口を480万人近くも上回ることになります。
 
 なぜ高齢者数が2042年にビークを迎えるかといえば、団塊世代に次いで人口ボリュームの大きい団塊ジュニア世代(1971〜1974年生まれ)がすべて高齢者となるためです。
 
Q1:そこで質問です。
 本県の現在の高齢者人口及び高齢化率をお示しください。併せて、10年前と比べ、どのように推移しているのかお示し下さい。
 

(高齢者地域包括ケア推進課長 答弁)
昨年4月1日現在の65歳以上人口は約142万4千人で、高齢化率は27.9%です。10年前の平成24年4月1日現在の65歳以上人口は約114万人で、高齢化率は22.4%でしたので、65歳以上人口は約28万4千人の増加、高齢化率は5.5ポイントの増加となっています。

 
 高齢者の絶対数が増えれば、高齢者向けサービスの絶対量も増やさざるを得なくなります。総人口に占める高齢者の割合は2042年以降も伸びるため、高齢者向け施策は人数が一番多くなる同年に合わせて進めなくては間に合いません。その社会コストはかなり大きくなります。それがゆえに、これを「2042年問題」と呼ぶわけです。
 
Q2:そこで質問です。
 今年度、本県の高齢者(高齢者、後期高齢者)向けサービスに係る予算の額はどれくらいになるのか? 主なものである、国民健康保険、後期高齢者医療、介護保険、地域支援事業についてお答えください。
 また、新年度予算での高齢者(高齢者、後期高齢者)向けサービスに係る予算の額はどれくらいになるのか、併せてお答えください。
 

(高齢者地域包括ケア推進課長 答弁)
 今年度当初予算で、国民健康保険の保険給付費交付金は70歳から74歳までの額ではありますが、1,244億円余、後期高齢者医療負担金が776億円余、介護給付費負担金が597億円余、市町村が開催する介護予防教室や地域包括支援センターの運営等を行う地域支援事業の経費の一部を負担する介護保険地域支援事業交付金が42億円余となっています。また、今議会に提案しております来年度予算案としまして、国民健康保険の保険給付費交付金が1,399億円余、後期高齢者医療負担金が795億円余、介護給付費負担金が604億円余、介護保険地域支援事業交付金が42億円余となっております。

 
 先ほどの答弁で、10年前の本県の高齢者人口及び高齢化率についてお答え頂きました。やはり、本県でも間違いなく高齢化は進んでいくことが明らかです。
 
Q3:そこで質問です。
 高齢化が間違いなく進んでいくことを前提にした場合、本県予算に占める高齢者(高齢者、後期高齢者)向けサービスに係る予算はどのように推移すると考えるか、お答えください。
 
 

(高齢者地域包括ケア推進課長 答弁)
 今後も当面の間、高齢者人口が増えることに伴い、国民健康保険、後期高齢者医療、介護保険及び地域支援事業についての本県の予算は、増加していくことが見込まれます。

 
 来年、2024年は、3年を1つの区切りとして見直される介護保険の事業計画がスタートする年です。
 
 急速な高齢化は重度の患者や要介護者の激増を生みます。問題はこれだけにとどまりません。認知症患者の増加や、社会保障費の膨張、「地域の足」や高齢者向けの住宅をどう確保していくのかなど、これまで問題視されてこなかったような課題が、2025年を前にして一気に表面化してくると見られます。

 戦後の日本は核家族化が進んできましたが、少子高齢化が重なることで、過去には想定されることのなかった問題が一気に噴き出してきている。その代表例が「老老介護」です。
 
 2025年には、世帯主が65歳以上という高齢者世帯が約2,103万世帯、このうち75歳以上が1,225万世帯を占めると予想されています。その70%近くはひとり暮らしや、夫婦とも高齢者という世帯が占めます。いわゆる「老老介護」 です。
 
Q4:そこで質問です。
 本県の「老老介護」をしている方の数、現状と、将来的な推計はどのようになるのか、お答えください。
 

(高齢者地域包括ケア推進課長 答弁)
 国が実施している「国民生活基礎調査」において、3年ごとに全国の数値ですが、介護の状況について公表されております。
 当該調査では老老介護をしている方の数はありませんが、「要介護者等と同居の主な介護者の年齢組合せ別の割合」があり、平成22年以降、老老介護の割合は毎回、増えております。ただし、都道府県別の状況は示されておりません。また、老老介護についての将来の推計については、行われておりません。

 
 「老老介護」 とは、介護される側も、介護する側も高齢者ということですが、その対象は配偶者だけとは限らず、親も子供も高齢者という状況もあります。介護する側も要支援や要介護認定を受けているというケースも少なくありません。

 政府は社会保障費の抑制に向けて、医療・介護を「病院完結型」から「地域完結型」へシフトさせようとしており、老後も住み慣れた地域で暮らし続けられるようにというのがキャッチフレーズです。
 
 その具体策として、24時間対応の訪問サービスを中心に、医療や介護・生活支援などを一体的に提供する「地域包括ケアシステム」構想を描いており、今後は在宅サービスをどんどん増やす考えですが、高齢者のひとり暮らしや、夫婦とも高齢者という老老世帯が増えるのでは、「地域包括ケアシステム」が政府の思惑通りに機能するとは思えなません。
 
 そもそも日本全体で勤労世代が減っていくのに、医療・介護人材だけを増やすわけにはいきません。いくら診療報酬や介護報酬を上げても、在宅向けサービスの量的拡大にはおのずと限界があります。そうなると、必然的に公的サービスを補完する「家族の支え」 に期待が集まるわけですが、「家族の支え」はどこまで当て込められるのか、不確実な時代と言える。

Q5:そこで質問です。
 超高齢社会、増える「老老介護」の時代を迎え、これからの「地域包括ケアシステム」はどうあるべきか、考えをお聞かせください。
 

(高齢者地域包括ケア推進課長 答弁)
 団塊の世代が全員75歳以上となる2025年、更にはその先の2040年にかけて、85歳以上の人口が急増するとともに、高齢者単独世帯や夫婦のみの世帯が増加することが見込まれています。
 85歳以上の年代では、要介護度が重い高齢者や、医療・介護双方のニーズを有する高齢者、認知症の人が大幅に増加し、また、高齢者世帯の増加により、生活支援や住まいの支援を要する世帯も増加することが見込まれています。
 このような状況の変化に対応できるような「地域包括ケアシステム」を構築していかなければならないと考えます。

 
 2019年「国民生活基礎調査」によれば、65歳以上の「老老介護」 は59.7%。75歳以上の「老老介護」も33.1%、年齢階級別でみると「70〜79歳」を介護しているのは、同じ「70〜79歳」が56.0%と最も多くなっています。

 ところが、要介護者が80代になると、50代による介護が31.6%と急増します。70代を介護する50代9.6%の3倍です。
 
 配偶者が亡くなった後、自身が要介護になると、50代の娘か息子の妻の世話になる人が多いということになります。80代以上の高齢者が増え続けることを勘案すれば、「地域包括ケアシステム」を機能させるには50〜60代に大きく頼らざるを得ませんが、問題は50代、60代の女性が引き続き介護の担い手となりうるかどうかということです。
 
 60代のほうが50代に比べて配偶者の介護にあたる可能性が大きいとすれば、とりわけ期待されるのは50代の女性となります。家族の介護に割く時間を見ると、要介護5では「ほとんど終日」と「半日程度」を合わせて69.5%に上ります。
 
 要介護4は54.4%、要介護3も50.1%に及びます。総務省の2017年「就業構造基本調査」では、50代女性の有業率は50〜54歳が76.8%、50〜59歳は70.4%です。半数はパートやアルバイトですが、「地域包括ケアシステム」が普及したとしても、家族の拘束時間が極端に短くなるとは考えづらく、中重度の要介護者を抱えて仕事もしていくのはどう考えても厳しいと言えます。政府は労働力不足の対策として、女性の活躍推進に力を入れていますが、その成果が上がれば上がるほど在宅介護の担い手不足が深刻化します。
 
Q6:そこで質問です。
 これからの超高齢社会において、増え続けていく家族介護をどこが中心となり、どのように支援していくのか、県としての考えをお示しください。
 

(高齢者地域包括ケア推進課長 答弁)
 家族介護をされておられる方は、体力が必要となる介護を日常的に行うため、体への負担が大きいこと、また、一人で介護を抱え込み精神的な疲労が蓄積しやすいこと、働く世代の場合には、仕事との両立などの悩みを抱えておられます。
 このような御家族からの相談に対して、市町村が設置する「地域包括支援センター」において、必要な介護や生活支援サービスなどにつなげる支援を行っております。
 県では、地域包括支援センターの資質向上、体制強化に取り組むため、センター職員を対象に研修を行うとともに、センターの運営経費に対し、地域支援事業交付金による財政支援を行っております。

 
 将来的には、未婚化も懸念材料となり、状況はさらに深刻化します。
 女性の生涯未婚率は上昇カーブを描いており、2025年には18.4%になると推計されています。当然ですが、彼女たちは自分の生活があります。働かなければ自分の生活を維持できず、介護離職や休職をしようにもできないということです。50代女性が介護の中心となるのが困難な時代が来ていると認識せざるを得ません。
 
 そして、もう1つ見落とせないのが晩婚・晩産の影響です。2016年の第1子出生時の母の平均年齢は30.7歳です。第2子以降の誕生も考えれば、「50代で子育て中」という人は増える傾向にあります。これでは、とても介護にまで手が回りません。
 
 すなわち、育児が一段落する前に年老いた親が要介護状能となり、育児と介護を同時に担わざるを得ない 「ダブルケア」 に直面する人が増加するという事です。
 
 内閣府が2016年4月に、政府としては初の推計をまとめていますが「タブルケア」をしている男性は8万5,400人、女生は16万7,500人の計25万2,900人に上っています。
 
 年齢別では40代前半が27・1%で最も多く、30代後半が25・8%、30代後半も16・4%で続く。約80%が働き盛りの 30〜40代となっています。
 
 育児と介護の両方を主に担う者は、2016年の内閣府の調査によると男性が32・3%に対し、女生は48・5%で、より多く女性に負担がかかっています。
 
 仕事をしていた人のうち、業務量や労働時間を減らさざるを得なかった女性は38・7%で、その半数近くが離職に追い込まれています。
 
 昨日、3月8日は「国際女性デー」でしたが、英国のエコノミスト誌によれば、「女性の働きやすさ」は、日本は先進29ヶ国中、ワースト2という不名誉を伝えています。女性が、家庭と仕事のどちらかを選ばなければならない現状にあります。

 「ダブルケア」は、「育児と介護」という組み合わせだけではありません。ひとりっ子同士の結婚が珍しくなくなったいま、夫と妻の親が同時に要介護となり、育児と介護、そして夫婦の両親の同時介護となる「トリプルケア」もあり得る時代に入っています。

 「ダブルケア」のさらなる問題点は、親の晩婚・晩産が世代を超えて子どもに影響を及ぼし得ることです。
 
 夫の定年退職後も、子どもが大学などに在学するケースでは、早くから収入面の計画を立てておかないと、学費の支払いと生活資金確保の両立を難しくします。人生設計に“予期せぬ悩み”をもたらします。
 
 晩婚・晩産といえば「少子化の要因」としてばかりクローズアップされていますが、このように「超・高齢者大国」とも密接に関わっています。

Q7:そこで質問です。
 本県における「ダブルケア」の現状を、県としてどれくらい把握しているのか、お答えください。
 

(高齢者地域包括ケア推進課長 答弁)
 ダブルケアの現状については、委員がおっしゃったとおり、国において、平成27年に育児と介護のダブルケアの実態に関する調査が実施され、全国の現状について公表されておりますが、都道府県別の数値はありません。

 
 人間は誰しも、いつかは最期の時を迎えます。日本は超・高齢社会に踏み込んでいますが、次にやってくるのが「多死社会」です。2016年の年間死亡者数は130 万7765人で戦後最多を更新しました(厚生労働省の「人口動態統計月報年計」)。
 
 「社人研」の推計では、2030年に160万人を突破し、2039、2040両年の1 67万9,000人でピークを迎え、その後もしばらくは160万人レベルで推移するといわれています。

 その一方で、「多死社会」の備えはいまだに十分とは言えません。死亡者数の増大で懸念されることといえば、斎場や火葬場の不足です。
 
 今後、関係市町村、事務組合と連携を取り、これから迎える「多死社会」に備えるよう要望しまして、私の質問を終わります。