2023年3月13日「予算特別委員会」
県土整備部質問
「人口減少社会における労働者不足の対策について」

 年齢を重ねるのは人間だけではない。われわれの生活を支える道路や上下水道、市民ホールなどの社会インフラも急速に老朽化が進んでいます。多くは1960年代の高度経済成長期に集中的に整備されたものです。

 建設業も人口減少の影響を大きく受けることになります。国土交通省によれば、道路や建物の生産高である建設投資は1992年度の約84兆円がピークとなり、2022年度は66兆9,900億円で、ピーク時より20.3%減る見通しとなってます。


 人口減少が進むと需要が現行水準を維持することは考えづらいわけですが、一方で、建設業の場合には政府投資の拡大が見込まれています。


 これは、社会インフラの多くが高度経済成長期以降に整備されており、老朽化が進んでいくため、更新が喫緊の課題となっているからです。

 
 国土交通省によれば、2033年には、長さ2メートル以上の道路橋の約67%、水門など河川管理施設の約64%が、建設後50年以上になるといいます。建設から50年以上も経てば、維持管理や更新の費用もバカになりません。
 
 例えば、全国に約72万カ所ある道路橋の場合、建設後50年を経過する施設の割合は、2019年3月時点の27%から、2029年3月には52%へと跳ね上がります。このように、各種公共インフラ施設に対して大規模に手を入れなければならない時期を迎えています。
 
Q1:そこで質問です。
 本県内の各種公共インフラ、とりわけ県管理の道路、河川・ダム、港湾などについて、中長期的に機能を保持するために、維持管理・修繕・更新などの計画があるのかお聞きします。
 

(県土整備部企画課長答弁)
 県が管理いたします公共施設等につきまして、中長期的な視点により、更新・集約化・長寿命化等を計画的に行うため、「福岡県公共施設等総合管理計画」を平成29年に策定をしております。
 この計画に基づきまして、道路、河川、港湾などの個別施設ごとの維持管理・修繕・更新等に係る取組方針や具体的な実施内容などを示すものとして、「個別施設計画」を策定しております。

 
 各種公共インフラについて、維持管理計画を立てていることについてわかりました。 国交省は、社会資本メンテナンス元年といわれる2013年以降の取組の実績や新たな知見等を踏まえ、今後30年、2048年度までの維持管理・更新費の推計を行っています。
 
 その試算によれば、必要となる維持管理・更新費は2013年度の約3兆6000億円が、2018年度には約5.2兆円、10年後の2023年には20〜40%増となり5.5兆から6兆円。2028年には5.8兆円から6.4兆円、2038年には6.0兆円から6.6兆円、そして、2048年には5.9兆円から6.5兆円に膨らむとされています。
 
 そして、その費用は勤労世代が減って「老いた日本」に重くのしかかるということになります。
 
Q2:そこで質問です。
 先ほどお尋ねした公共インフラについて、将来的な維持管理費の推計は 行っているのかお聞きします。

 

(県土整備部企画課長答弁)
 先ほどご説明いたしました「福岡県公共施設等総合管理計画」におきましては、公共施設等の維持管理・修繕・更新等に係る50年間の費用総額の見込みを試算し、記載をしております。
 また、「個別施設計画」では、令和8年度までの修繕、更新などの対策内容、実施時期及び概算費用などを明示しております。これらの計画をもとに対策を講じることで、財政負担の軽減や平準化を図り、効率的・効果的な維持管理を実施してまいります。

 
 予算面での推計が行われていることはわかりました。しかし、公共インフラの老朽化対策には労働力の確保といった課題もあります。

 「日本建設業連合会」が示したデータによれば、2021年の全就業者6,713万人における建設業の人数は485万人で、7.2%と、統計にある1997年から一貫して下降し、ピーク時と比べて29.2%少なくなっています。


 その中で、技術者(施工管理を行う人)は1997年の41万人から2021年は37万人、技能労働者は455万人から318万人へとそれぞれ減っています。


 また、年齢別の就業者数は、55歳以上が増加し、逆に、29歳以下が減り続けており、2021年は55歳以上が35.5%を占める一方、29歳以下は12.0%にとどまっております。

 
Q3:そこで質問です。
 本県における建設業の就業者数は、どのように推移しているのかお聞かせください。また、今後の見込みについて、どのようにお考えかお聞かせください。
 

(県土整備部企画課長答弁)
 総務省によります国勢調査では、福岡県における建設業就業者数は令和2年で 約17万8千人となっており、ピーク時であります平成7年の約25万9千人より、31.3%減少しております。
 また、この調査における年齢別の建設就業者数をみてみますと、本県では55歳以上が36.3%、29歳以下が11.5%となっており、全国と同じような傾向が見受けられます。
 これからも人口減少と若い就業者の割合が低い状況が続いた場合には、建設業の就業者数は、今後も減少していくと考えられます。

 
 人口減少社会の到来に伴い、建設業においても、今後、新規学卒者だけで賄うことは難しくなります。 総務省の調査によれば、2023年1月に新成人を迎える20歳は117万人で、男性は60万人、女性は57万人です。
 
 各業種による若者争奪戦は激化の一途だというのに、建設業だけで20歳男性人口の3分の1を確保するというのは、さすに無理があります。
 
 これに対して国交省は、建設現場の生産性を年間1 %向上させることで 万人分の人手を確保したのと同じ効果が得られると試算し、新規学卒者を1万5000人採用し、外国人労働者を約3万5000人受け入れれば対応できるとしています。
 
 しかしながら、国交省の皮算用どおりにいくとは考えられません。国交省の別の資料によれば、建設業における2021年の年間実労働時間は全産業の1632時間と比べて346時間、率にすると21・2%も長くなっています。休日状況も建設業全体で見ると36・3%が「4週4休以下」となっており、「4週 8休」の週休2日となっている人は19・5%にすぎません。
 
 技能労働者(建設工事の直接的な作業を行う人)の賃金も、他産業のどう延齢、経験年数などをベースに比べても低くなっています。2019年で比較すると、全産業の男性労働者が560 万9,700円なのに対し、建設業の男性技能労働者は462万3,900円です。
 
 就業者が減少した主な原因は、受注高が減った時代、他業種に流出した人たちが戻っていないと指摘されています。いまも述べました通り、建設業は肉体労働、長時間労働、休日が少ないなど、労働環境が厳しいとの印象が定着していることもあり、新規に就業する若者が増えないのです。
 
Q4:そこで質問です。
 県は、建設業界の声を聞き、このような現状を把握しているのか、お聞かせください。
 

(県土整備部企画課長答弁)
 県では、毎年、建設業界の皆様と意見交換を行っております。
 その中で「現場の労働環境を改善しないと、将来的にさらに労働力不足が加速すると思われる」といった意見や「休日や労働時間を理由に離職する若手技術者が多く、若手や新規入職者の確保が現状では非常に厳しい」、こういった意見を伺っております。建設業界における人材確保が厳しい状況であると、こういった意見の方から、厳しいということを認識しております。

 
 建設業の実態について意見交換を行っていることはわかりました。
 建設投資が2017年度と同水準と仮定した場合、建設業の労働時間を、例えば製造業を下回る労働時間とするためには、5年間で5%減少させる必要があり、新たに16万人増やす必要があると見積もられています。

 この推計では、コロナ禍前に、すでに2万人不足しており、さらに外国人労働者について3万人ほど少なくなると試算されており、合計すれば2023年度までに約21万人を確保しなければならないとされています。


 今後、迫りくる人口減少社会の到来に伴い、建設業においても、新規学卒者だけで賄うことは難しくなります。総務省の調査によれば、2023年1月に新成人を迎えた20歳は117万人で、男性は60万人、女性は57万人です。


 各業種による若者争奪戦は激化の一途だというのに、建設業だけで20歳男性人口の3分の1を確保するというのは、さすがに無理があります。


 これに対して国土交通省は、建設現場の生産性を年間1 %向上させることで16万人分の人手を確保したのと同じ効果が得られると試算し、新規学卒者を1万5,000人採用し、外国人労働者を約3万5,000人受け入れれば対応できるとしています。


 しかしながら、国土交通省の皮算用どおりにいくとは考えられません。国土交通省の別の資料によれば、建設業における2021年の年間実労働時間は全産業の1632時間と比べて346時間、率にすると21.2%も長くなっています。休日状況も建設業全体で見ると36.3%が「4週4休以下」となっており、「4週 8休」の週休2日となっている人は19.5%にすぎません。


 また、技能労働者(建設工事の直接的な作業を行う人)の賃金も、他産業の同年齢、経験年数などをベースに比べても低くなっています。2019年で比較すると、全産業の男性労働者が560 万9,700円なのに対し、建設業の男性技能労働者は462万3,900円です。

 このような労働環境では、若者の入職が期待できないと考えます。

Q5:そこで質問です。
 建設業の人材確保対策として、本県では、どのように取り組んでいるのでしょうか。また、それでも不足する場合は、どのように対応するのかお聞きします。
 

(県土整備部企画課長答弁)
 県発注工事では、「週休2日の原則化」、労働時間縮減のための「施工時期の平準化」、女性技術者が建設現場で働きやすくなるよう、「女性用トイレの設置」などの労働環境改善に率先して取り組んでおります。
 また、高校生や大学生の建設業への就職や建設系学科への進学に繋げるため、建設業の魅力や仕事の内容を伝えます「魅力発信セミナー」や、女性技術者が様々な働き方や悩みを共有しキャリアアップを図るための「女性活躍セミナー」などの経費を、来年度の当初予算にお願いしているところでございます。
 労働力不足を補うための対策としましては、施工機械の自動化や移動時間が不要となる情報共有システムなど、建設現場に情報通信技術を取り入れ、生産性の向上を図る取組を引き続き行ってまいります。

 
 人材確保のための取組についてはわかりました。
 しかし、せっかく就業しても辞めてしまう、離職率も少なくありません。とりわけ不足しているのが、若い施工管理技士です。建設現場には不可欠な存在であり、このままべテランが引退していけば公共インフラ施設の整備や維持管理が難しくなると指摘されています。
  
 さらに、全体の25.7%を占める60歳以上の技能労働者の大半が、今後10年で引退すると、熟練した技術も消えていくと推測されています。


 厚生労働省の「労働経済動向調査」でも、人手不足を示す指標の「—(マイナス)」いわゆる「不足」と回答した事業所の割合から、「+(プラス)」いわゆる「過剰」と回答した事業所の割合を差し引いた値は、建設業では2012年から人手不足を示す正の値となり、全産業の平均を上回っており、2020年は全産業の平均よりも22ポイントも高い46%に達しています。人手不足が極めて深刻であることを示す数字となっています。


 現在の人手不足は、同時に将来的な懸念を内在しています。建設業も頼みの綱は外国人労働者と言われていますが、製造業と同じくどこまで雇用が見込めるのか、読み切れません。


 今後、世界中で「ウィズコロナ」政策を取る国が大勢となり、また、インドや東南アジア、アフリカ諸国など、これから開発ラッシュを迎える国々も目白押しで、各国の建設現場で外国人労働者の受け入れニーズが高まり、まさに外国人労働者の争奪戦が始まります。


Q6:そこで部長に質問です。
 少子高齢化がここまで進み、現実に日本も、そして本県も人口減少社会に突入したこの時代にあって、建設業においても、労働者の大幅な減少が見込まれます。
 こうした労働者不足に備え、本県として今後、どのように取り組んでいくのか、部長の考えをお聞かせください。

 

(県土整備部長)
 少子高齢化や人口減少は、生産年齢人口の減少に繋がりまして、建設業における労働者の確保にも大きく影響するものと認識しております。
 先ほど課長がお答えしましたとおり、県では、建設業における労働者不足に備えまして、週休2日の原則化や施工時期の平準化など、労働環境の改善を進め、人材確保に 取り組むとともに、情報通信技術を活用した生産性向上の取組も引き続き率先して進めてまいります。
 また、より幅広く人材が確保できるよう、若者の入職を促し、女性の活躍を推進するために、建設業の魅力や、モノづくりの楽しさ、職場環境の改善状況などの魅力発信に取り組んでまいります。
 さらに、県の取組を建設業界全体に広げるために、業界団体との意見交換の場などを活用いたしまして、しっかり情報共有し、業界全体の働き方改革を促進することで、魅力ある建設業界の実現を後押ししてまいります。

 
   今、部長の方からの決意をいただきましたけども、県を挙げて建設業の労働者の確保にしっかりと取り組んでいただきたいと思います。   終わります。