2023年9月『9月県議会』一般質問
人口減少社会における外国人労働者の雇用問題について

 民主県政クラブ県議団の原中誠志です。発言通告に従い、一般質問を行います。1項目は、「人口減少社会における外国人労働者の雇用問題について」です。

 私は今年2月の予算特別委員会において、「国立社会保障・人口問題研究所」が発表した将来推計人口をもとに、日本の人口減少について質問しました。


 半面、我が国の在留外国人数は、昨年、2022年末で307万5,213人、前年末比11. 4%増加で、過去最高を更新。初めて300万人を超えています。

 
 そして、厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況のとりまとめによると、2022年10月末現在、日本で働く外国人労働者は対前年比5.5%増の182万2,725人で、届け出が義務化された2007年以降過去最高を更新。外国人労働者は国内雇用者全体の3%に達しています。
 
 この外国人労働者を国籍別に見ると、ベトナムが最も多く46万2,384人で全体の25.4%。次いで中国(38万5,848人、同21.2%)、フィリピン(20万6,050人、同11.3%)と続いており、増加率が高かったのは、インドネシア(2万5,079人増)、ミャンマー(1万2,997人増)、ネパール(1万9,936人増)の順となっています。
 
 在留資格別にみると、「身分に基づく在留資格」が最も多く、外国人労働者数全体の3分の1を占め、次いで「専門的・技術的分野の在留資格」、「技能実習」の順となっています。

 このうち、「技能実習生」については、2022年末現在で約32万5千人。出身国は1位ベトナム、2位はインドネシア、3位はフィリピン、4位は中国。以下、タイ、ミャンマー、カンボジアと続き、ベトナムとインドネシアで68%を占め、東南アジアからの来日が多いのが判ります。


 日本政府が、外国人労働者の受け入れを拡大した理由としては、少子高齢化にともなう国内の人手不足が挙げられます。2018年12月の国会において『出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律』が成立、2019年4月から「特定技能」1号と2号という新しい在留資格が創設され、今日に至っています。

 
 この法では、「技能実習」の目的は労働ではなく国際貢献であるとしています。
 少し前の資料になりますが、「公益財団法人 国際人材協力機構」の資料によると、外国人技能実習生を受け入れている企業の従業員数は、10人未満が50.4%で最も多く、次いで20人未満が15.6%、50人未満人が15.3%の順であり、100人以上の企業は9.8%に過ぎません。この結果を見ても明らかなように、「技能実習」は国際貢献というよりは中小零細企業における人手不足を解消するために利用されているという実態が現実です。

Q1:そこで伺います。

 本県における外国人労働者について、在留資格別に人数をお示しください。また、就労先事業所の従業員規模別の構成比はどのようになっているのか、お答え下さい。

【福祉労働部長 答弁】

  • 福岡労働局が公表している、令和4年10月末現在の「外国人雇用状況」を在留資格別にみると、「留学」を含む「資格外活動」が20,743人で最も多く、次いで「技能実習」が13,057人、「特定技能」を含む「専門的・技術的分野」が12,004人となっている。
  • また、外国人を雇用する事業所の規模別構成比をみると、従業員数「30人未満」の  事業所が61.0%で最も高く、次いで「30人~99人」が17.5%、「100人~499人」が10.9%、「500人以上」が3.0%となっている。


 日本は少子高齢化が進み、人口減少社会に入っています。国内の労働力不足は深刻で、生産年齢人口の減少、地方から都市への若者の人口流出、人気業界・職種への偏り(かたより)など、今日、特にブルーカラーの分野で労働者不足が言われています。


 国内の労働者不足を解消するためには、外国人材の受け入れが必要と言われて久しいわけですが、日本人はもとより、外国人労働者にとっても「日本国内で快適に働けるかどうか」は企業選びの最大の関心ごとでもあります。


Q2:そこで知事に伺います。

 本県において、外国人材確保について、商工会議所や商工会、また九経連など企業団体との意見交換や、合同の取り組みなどが成されているのかどうかお聞きします。

【服部知事 答弁】

  • 県では、国、市町村をはじめ、商工会議所連合会、商工会連合会、中小企業団体中央会、九州経済連合会など60団体で構成する「福岡県外国人材受入対策協議会」を設置し、県内における外国人新規入国者数や外国人材雇用状況などについて、情報を共有し、意見交換を行っている。
  • また、県、県国際交流センター、県内大学、関係自治体、商工会議所等で構成する「福岡県留学生サポートセンター運営協議会」において、県内留学生の就職に係る個別相談やセミナーの開催、企業とのマッチングなどを行っている。
    • さらには、九州各県や九州経済連合会とともに「九州グローバル人材活用促進協議会」を設置し、九州内企業への留学生の就職促進を図っている。
  • 外国人労働者の雇用環境の改善については、先ほど申し上げた「福岡県外国人材受入対策協議会」における「労働環境部会」の議論を基に、地域のスポーツや文化的行事を通じた交流の機会を積極的に設けるなど、外国人の雇用に際しての工夫を取りまとめた「外国人材受入事例集」を作成し、外国人材の受入れに当たって県内企業が具体的なイメージを持てるよう啓発を行っているところである。


 その上で、本県内の外国人労働者の雇用環境の改善に向け、これまでどのような取り組みを進め、成果が果たされたのか、お聞きします。


 今日、東アジアでは、中国はもとより、韓国、台湾、香港、シンガポールなどの国や地域では急速に経済成長を遂げています。ところが、日本をはじめ、こうした経済発展を遂げる国々においては、軒並み出生率の低下が見られます。

 
 昨年、2022年の日本の合計特殊出生率は1.26で過去最低を記録。 韓国では、2022年の合計特殊出生率は0.78と、OECD加盟国の中でも最下位です。シンガポール1.05、中国は1.18と、経済力のある国ほど出生率が低いのが特徴です。
 
 こうした経済力のある国々においては、日本と同様、経済力の持続、経済活動の継続が大きな課題となっています。研究者によると、日本をはじめ、東南アジア諸国が著しい経済成長を遂げるなか、2025年、あと3年後には激しい外国人労働者の争奪戦が始まると指摘されています。

Q3:そこで知事に伺います。

 こうした東アジア全体で起こりうる外国人労働者の争奪戦について、知事はどのような認識をお持ちなのかお聞きするとともに、県挙げてどのような外国人材確保に向けて取り組まれるのか、お答えください。

【服部知事 答弁】

  • 現在、議員ご指摘の東アジアのみならず、先進国を中心に人手不足が社会問題となっており、今後ますます人材獲得をめぐる国際競争が激しさを増していくと考える。
  • このため県では、先ほど述べたとおり、県内はもとより、九州の各県及び経済団体等と一緒になって、留学生の就職に係るセミナーの開催や企業とのマッチングなど就職促進に引き続き取り組んでまいる。
    • また、今年度新たに開設する多言語ポータルサイト「FUKUOKA IS OPEN」において、県内企業に就職した外国人の活躍や外国人を採用する企業情報の発信を行い、一人でも多くの外国人材を獲得できるよう、取り組んでまいる。


 東アジア全体で外国人材の争奪戦が始まっているなか、国内では、円安、原材料高、物価高に加え、国内の人手不足により、県内企業者も収益幅が 減少し、厳しい経営環境にあると認識します。

 
 こうした中、日本で働く外国人労働者は、本国への仕送り額が目減りし、日本で働くメリットが下がっていることから、日本離れが加速していると言われ、日本より賃金の良い国に移りたいという報道も多く見られています。

 今後、県内においても外国人労働者から選ばれる企業となるためには、賃金、勤務労働条件の改善、ハラスメント対策、従業員のエンゲージメント向上は大変重要な要素と言えます。


Q4:そこで知事に伺います。

 こうした厳しい経営環境の折、県内企業が留学生等の外国人材から選ばれる企業になるため、県としてどのような企業支援を講じるのか、お示し下さい。

【服部知事 答弁】

  • 外国人材から選ばれる企業になるためには、外国人雇用に係る制度を正しく理解し、受け入れた外国人材がその能力を十分に発揮できるよう、適正な労働条件の確保やハラスメントの防止など、職場環境を整えることが重要であると考える。
  • そのため県では、各種在留資格や外国人材の定着・能力発揮のための職場環境整備等に関する企業からの相談を受ける専用窓口を令和元年度から設置している。
    • 専用窓口では、これまでに、技能実習生や特定技能での外国人材の受入れに必要な要件や留学生の採用後に必要な手続など、計755件の相談を受け付けている。
  • また、県内の企業が外国人材の受入れに当たって知っておくべき法令や実際の受入れ事例等を学べる講習会を令和元年度以降、計116回実施し、外国人材の受入れに関心のある企業・団体から1,641人が参加している。
  • 今後とも、福岡労働局や外国人技能実習機構等の関係機関と連携し、県内企業が留学生等の外国人材から選ばれる企業となるよう取り組んでまいる。


 アジアにおいては、中国政府はこれまで国内の雇用を守る立場から外国人労働者の受け入れは規制してきましたが、今後は移民受け入れに転換する方向にあると言われています。

 
 台湾は、2023年の最低賃金を月給ベースで4.56%引き上げ、非正規や外国人労働者にも適用。台湾の主要産業であるハイテク業を支えるのは、工場で働く東南アジアの外国人労働者で、「産業移工」と呼ばれ、台湾人と同じ最低賃金と労働基準法が適用されています。
 
 また韓国では1993年、日本の「技能実習制度」をモデルに「産業研修生制度」を始めましたが、2004年には「雇用許可制」に移行し、現在は最長9年8カ月にわたって働けることになっています。
 
 なおかつ、韓国政府が各業界からの要望に基づいて、製造業や農畜産業など業種別の年間受け入れ数を決め、その上でベトナムやタイなど労働者を送り出す国と政府間協定を締結し、悪質なブローカーを排除しています。

 更に、2018年には永住を視野に入れた「熟練技能(別名:点数制)ビザ」が創設されており、400人から始まった人数は徐々に増やされて、2022年は2,000人、23年には5,000人となり、韓国はいまでは「移民大国」とさえ言われています。


 そして、オーストラリアでは2022年3月、ベトナム人労働者がオーストラリアで農業に従事するための条件が規定された「覚書」を締結。農業に従事するベトナム人労働者を、日本円で月給約27万から33万円で毎年約1,000人受け入れることで合意しています。

 
 アジアにおいてさえ、このように国を挙げ、外国人労働者のより良い人材を、より多く、どれだけ国に引き寄せることができるかしのぎあっていますが、我が国は出遅れの間は否めません。

Q5:そこで知事に伺います。

 我が国がこれから外国人材を多く受け入れるため、知事は国の施策として不足していると考えるものは何か、お答え頂くとともに、その解決に向けて国にどう働きかけていかれるのか、お答えください。 
 
【服部知事 答弁】

  • 県は、先ほど申し上げた福岡県外国人材受入対策協議会や留学生の就職促進の取組などに加え、国の補助を活用しながら、外国人相談センターの運営や県内市町村と連携した日本語教育環境の整備に取り組んでいる。
  • 今後、外国人材の増加、さらには、家族を帯同して来福する方々の増加も見据えると、相談体制の強化や日本語教育環境の充実を図るとともに、外国人児童生徒の受入体制整備を進めていくことも必要である。
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    • このため、国に対して、
    • ① 地方公共団体による外国人に対する相談体制の整備・拡充などの取組に、継続的で十分な財政的支援を行うこと。
    • ② 外国人材のニーズに応じた日本語学習等の機会を提供する公的な仕組みを構築すること。
      等について、全国知事会を通じて政策要望を行なった。

    • さらに、県として、県議会の皆様とともに、只今申し上げた2点に加え、
      ③ 高まる外国人の教育ニーズに応えられるよう、インターナショナルスクールなど教育環境の整備に係る補助金制度の創設を要望しているところである。