予算特別委員会「県警察の海上警備艇の装備充実について」

2021年3月17日


 民主県政クラブ県議団の原中です。「県警察の警察用船舶の装備充実について」質問します。
 
 外務省や警察庁の報告をみると、近年、東シナ海の公海で外国船籍らしき別の船から覚せい剤などを洋上で受け渡す、いわゆる「瀬取り」とみられる行為は後を絶たず、この「瀬取り」によって、海外から本国へ持ち込まれるのは、覚せい剤などの薬物、そして金塊などが多くを占めるということです。

 なお、警察庁が公表している「瀬取り」に関する情報によると、薬物の製造を厳しい管理下に置いている我が国では、国内で乱用されている薬物のほとんどは海外から密輸入されているということです。
 
 警察庁の「2019年における組織犯罪の情勢(確定値)」を見ると、密輸入事犯における覚醒剤の押収量は609.5キログラムと、前年から高い水準にあり、乾燥大麻は120.3キログラムと前年同様100キログラムを超え、大麻樹脂は10.5キログラムと増加しています。
 
 態様別でみると、航空機を利用した覚醒剤の携帯密輸入事犯の検挙件数は189件と1996年以降で最多であり、密輸入事犯全体の69.2%を占めています。これに対し、洋上取引の検挙は年に1、2事件程度であるものの、1事件で概ね100キログラムから1,000キログラムと大量の覚醒剤が押収されていることから、覚せい剤の洋上取引は極めて悪性が高いと言わざるを得ません。
 
 なお、洋上取引は地理的要因からか、そのほとんどに大陸系薬物犯罪組織が関与していると言われていますが、検挙場所には特段の傾向は認められず、全国どこの港が利用されてもおかしくない状況にあると指摘されています。
 
 更に、漁業法令違反に関しても、警察の洋上取り締まりの対象となっています。また、日本は1996年に『国連海洋法条約』を批准しており、外国漁船の漁業法令違反に対してその任務の重要性は格段と大きくなっており、その遵守と法令順守の第一線に立つ県警の洋上取り締まりはより重要性を増しています。

 このように、県警の洋上取り締まりは、密輸・密漁等の犯罪の防止、水上交通秩序の維持、事故・災害時等における救助活動等、船舶を使用しての警らや、船舶等への立ち入り検査等の活動を日々行われており、加えて、税関や出入国管理機関、沿岸警備機関等との連携も必要となっています。
 
 そこで、質問に入る前に、あらかじめ県警に「福岡県警察警察用船舶について」資料要求していますので、委員長のお取り計らいをお願いします。

【質問1】
 この資料に基づき、警察用船舶の説明と、どの様な任務に当たっているかお答えください。
 
【質問2】
 次に、近年の洋上における取り扱い事案について、特徴的な事例をお示し下さい。
 
 次に、洋上取引、いわゆる「瀬取り」について質問します。
 「瀬取り」とは、運搬船と引取船がGPS等を用い、洋上で接触して薬物を受け取り、あるいは運搬船が浮体を付けた薬物を海上に投下して去った後、引取船が回収して、地方港等の警戒の薄い地域で陸揚げを行う手口です。
 
 また、コンテナ貨物を利用したものでは、コンテナの一部を改造して薬物を隠匿したり、輸入貨物である家電製品、生鮮食品等に薬物を隠匿・混入するなどして、薬物が密輸入されています。このほか、航空機旅客による密輸では、摘発を逃れるため犯罪組織が、一見、犯罪組織とは関係がないとみられる国籍の者を運搬役(密輸の実行行為者)として利用している事例もみられます。
 
 2000年4月に公表された「統計数理研究所」の調査結果(覚せい剤乱用者総数把握のための調査研究)によると、我が国における覚せい剤乱用者数は185万人と推定されています。
 
 また、「国立精神・神経センター精神保健研究所薬物依存研究部」による調査結果:「薬物使用についての全国住民調査」によれば、1999年の覚せい剤生涯経験率、すなわち、これまでに、1回でも覚せい剤を経験したことがある者は、国民の0.4%、43万(±21万人)と推計されています。
 
 このように、乱用者数の推計値は調査機関によってばらつきがあるものの、少なくとも数十万人から百万人規模で薬物乱用者が存在すると推定されています。
 
 仮に、これらの覚せい剤乱用者が2日に1回(1回0.03〜0.04グラム)覚せい剤を使用するものと仮定すると、我が国の覚せい剤消費量は、年間数トンから10数トンと推定され、相当量の覚せい剤が、取締りの網をすり抜けて流入しているものと推定されています。
 
 先にも述べましたが、現在、国内において流通している麻薬・覚せい剤の大半は、海外から海上ルートによって密輸入されていると考えられています。
 
 昨年、2020年1月22日、海上保安庁は、2019年1年間に密輸事件で押収した覚醒剤が約1647キロ、末端価格で約988億円相当に上り、過去最多になったと発表しました。

 この中には、2019年6月に静岡県南伊豆町で約千キロ、12月に熊本県天草市で約590キロをそれぞれ押収するなど、大規模事件の摘発がされており、この2つの事件では、海上で覚醒剤を受け渡す「瀬取り」の手段が使われ、小型船を使って港に持ち込まれているとのことです。
 
 2019年の薬物密輸事件は計9件に上り、各県の警察や税関などと合同で摘発しています。薬物の種類別では、コカインが「神戸港」で10月にコンテナから約400キロを押収するなど、約577キロ、末端価格約115億円相当で過去最多。大麻は227グラムとなっており、水際対策の重要性が改めて確認されたところです。
 
 福岡県は、東アジアの大陸に近い位置にあり、外洋である東シナ海と接する筑前海を管轄しています。「瀬取り」が行われる可能性が高い海域を管轄として持っていることから、県警察として海上警備艇による取締り、更には、海上保安庁、自衛隊などと連携し、巡視船や航空機で重点的に監視に当たる必要があると考えます。
 
【質問3】
 そこで、近年の「瀬取り」の特徴はどうなっているのかお聞きします。
 近年、「瀬取り」に使われる船舶については、大型のコンテナ船、そして小型の高速艇が使われているということです。
 
 本県内には、「博多港」や「北九州港」といった主要港のほか、「大牟田港」、「苅田港」などの地方港があります。ここには海外からの船舶が数多く入港してくると思います。
 
 コンテナ船を使った薬物などの密輸に対する取り締まりはどうなっているのかお答えください。
 
 近年、世界的に「瀬取り」に使われる小型船は、高速艇化、GPSや高精度レーダーなどの装備、重火器類を装備しているということです。
 
 東シナ海の公海上から、我が国の海域に侵入してきた不審船については、遠洋の場合は海上保安庁の巡視船による監視及び取り調べが行われると思います。しかし、筑前海域になると県警察の警備艇による監視、取り締まりとなります。
 
 先も述べたように、「瀬取り」に使われる小型船は、高速艇化、GPSや高精度レーダーなどの装備を備え、更には、重火器類を装備していることもあることから、県警察の警備艇も時代に応じた装備にグレードアップする必要があると考えます。
 
【質問4】
 そこで、質問です。現在、5隻ある警察用船舶の更新、新建造はどうなっているのか、お答えください。
 
 併せて、外国船などの対応を考えると、高速艇化、高性能GPSやレーダーの配備は不可欠なものだと思います。こうした装備品の充実を図る必要があると思います。
 
 そして何より、相手が銃火器を使用した場合を想定すると、まずは警察職員の身の安全、といのちを守るということが必要です。そのためには、防弾ガラス、艇の強化が必要と考えますが、お考えをお示し下さい。
 
 いま、ご答弁を頂きましたが、県警察の洋上取締りは極めて重要な任務と思います。5隻の警察用船舶については国からの配備という事ですが、積載する装備については本県の予算で充実を図る必要があると思います。
 
 県警察として、こうした装備品の充実についてご検討いただくとともに、ここに奥田総務部長もいらっしゃることですが、県予算の確保に警察用船舶の装備充実に予算を配分して頂く様に要望申し上げ、私の質問を終わります。